研究課題/領域番号 |
19H01418
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
長谷川 珠子 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40614318)
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研究分担者 |
石崎 由希子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50547817)
永野 仁美 上智大学, 法学部, 教授 (60554459)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 障害者 / 雇用 / 就労 / 福祉的就労 / 特例子会社 / 就労継続支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、障害者の雇用・就労はどうあるべきかについて、法学と社会学のアプローチを用いて「実態」と「法制度」の両面から検討するものである。2016~2018年度の科研費(基盤B・研究代表者:永野仁美16H03556)において、研究代表者らは、障害者の就労実態を知るためのアンケート及びヒアリング調査を実施した。本研究ではそれらをもとに、特例子会社、就労継続支援A型事業所および就労継続支援B型事業所における障害者雇用・就労の実態及び課題を明らかにし、今後の障害者雇用・就労政策の在り方を提言することを目的とする。その一つの方法として、『現場からみる障害者雇用・就労(仮)』を出版予定であり、そのための研究会を開催し、各自で執筆をすすめた。 同時に、以下の外国法研究を行った。長谷川はハワイ大学で在外研究を行い、同大学に所属する雇用差別や障害者雇用を研究する教授らおよび障害研究機関とともに、日米の障害者雇用制度についての研究を行った。永野は、在外研究の機会を得て、ボルドー大学でフランスの障害者雇用政策について研究を行った。ボルドー大学その他の大学の研究者から、研究について助言をもらいつつ研究を進めると同時に、障害者雇用の実務に携わる人たちへのインタビュー調査も積極的に行った。3月には、障害者雇用に関する日仏シンポジウムを行うべく、関係者と複数回にわたり打ち合わせを実施し、準備を行った(ただし、シンポジウムはコロナウィルスの蔓延に伴う大学閉鎖のため中止)。石崎は、ドイツにおける障害者雇用・就業支援法制を整理した他、就労困難者(生活困窮者)の雇用・就業支援法制を調査・検討した。その結果、一定の範囲で類似のアプローチが採られていることなどが確認できた。これらの外国法の研究実績は、日本の障害者雇用・就労施策の在り方を提言するに際し、役立つものであり、上記書籍の執筆等に活かされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度中に、障害者が働く現場の声を反映させて障害者雇用・就労について検討した書籍(上述)を出版する予定としているところ、2019年度において7~8割程度の原稿を執筆した。原稿執筆に当たっては、個別に執筆を進めるだけでなく、Webを用いた会議(研究代表者及び研究分担者がそれぞれ在外研究中であったため)を開催し、内容を確認・調整しながら、執筆を進めた。この点については、おおむね順調に進展している。 外国法研究については、「研究実績の概要」で示したように、各自アメリカ・フランス・ドイツの研究を進めることができた。これらの成果を2020年度以降、3人で共有するとともに、原稿執筆などに反映させていく予定である。 2019年は、3年間の研究の初年度であり、目に見える形での業績を多く出せたわけではないが、各自の地道な調査・研究により、2020年度以降に向けた土台を作ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後(特に2020年度)については、①書籍出版に向けた原稿執筆、②外国法の調査、③労働法学会報告に向けた準備を行う。 ①出版については、2020年度中の出版を目指し、各自が草稿をとりまとめたうえで、研究会を開催し全体の調整や、最終的な提言に向けた議論を行うことを予定している。ただし、企業や事業所へのヒアリングを元に執筆している部分も多く、各事業主に内容の確認が必須となるところ、コロナ禍のなかで混乱している事業所も少なくないと考えられ、この確認作業が遅れた場合、書籍の出版にも遅れが生じるおそれがある。 ②外国法研究については、これまで各自が行った研究成果を3人で共有したうえで、新たに生じた疑問や課題に関し、アメリカ又はフランスへの現地調査を行いたいと考えている。ただし、コロナ禍の中で現地調査が困難な場合には、Webやメールを用いたヒアリング依頼を行うとともに、文献等を通した研究を行う。 ③学会報告について、研究代表者ら3人は、2020年秋に労働法学会において障害者雇用・就労についての報告(ワークショップ。報告タイトル「障害者の多様なニーズと法制度上の課題(仮)」)の機会を得ている(6月に東北社会法研究会でのプレ報告も予定)。同報告は、①福祉的就労から一般就労(一般雇用)への移行における課題と、②障害者が働くうえでの労働保護法規の適用の在り方を検討の課題とする。2019年度までは主に福祉的就労及び特例子会社という、保護された形での雇用・就労に焦点を当てて検討してきたが、学会報告の準備等を通し、本研究として予定している一般就労(一般雇用)をにまで広げた検討につなげる。また、学会報告を通し本研究に対して多方面からの意見を得ることが期待され、それらも研究に活かしていけると考える。
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