研究課題/領域番号 |
19H01443
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 利之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40214423)
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研究分担者 |
飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285)
荒見 玲子 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (20610330)
内海 麻利 駒澤大学, 法学部, 教授 (60365533)
荒木田 岳 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (70313434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 住民 / 代表 / 議員 / 二元代表制 / 「近代」化 / 村 / 合意形成 / 連携 |
研究実績の概要 |
初年度ということで、第1回企画委員会を2019年10月20日に開催し、研究課題について議論するとともに、それぞれの関心と分担の在り方、および、進め方について合意形成を図った。その後、各自が合意された進め方にのっとって研究を進め、第2回企画委員会に持ち寄って、議論をすることとした。 住民とは、基本的には自治体の統制者である「市民」として立ち現れるが、代表民主制の場合には、公選職政治家として登場する。この点を深めたのが飯島淳子の業績である。従来、議会に焦点が当たっていたのに対して、議員と住民とのコミュニケーションのあり方を検討した。戦後日本の場合、住民(「市民」)が、議員と長をそれぞれ別個に選挙するため、二元代表制として整理するのが通説であった。しかしながら、首長には住所要件(つまり住民要件)を求められていないことからも、首長が住民の代表であるとは言えないことを明らかにし、二元代表制論を批判する研究をまとめたのが、金井利之の業績である。 また、住民概念が発生してきた歴史を、16世紀(秀吉構想=太閤検地)までさかのぼって、村の「近代」化の観点から解明したのが、荒木田の業績である。村人・百姓・町人とは異なる住民概念が、明治期に、上からの行政区画として再編(「近代」化)された村と同時に析出されたことを解明した。住民が、住民自治でイメージする「市民」ではなく、国の行政の客体であることを抉りだした。都市計画の領域では、住民間の合意形成について、その正当化の技法に焦点を当てたのが内海麻利の業績である。また、社会福祉の領域では、住民から視た多機関連携を明らかにしたのが、荒見玲子の業績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1回企画委員会でのそれぞれの研究関心と研究計画を共有したうえで、各自がそれぞれの研究関心に沿って、自律分散的に研究を進めた。その意味で、年度前半の進捗は極めて順調であった。 しかしながら、2019年度の各自の研究を持ち寄り、議論を行い、さらに2020年度の研究に向けての検討を行うべく計画していた、2020年3月の企画委員会が、COVID-19対策の観点から開催することはできなかった。そのため、実質的な議論が停滞している側面はある。もっとも、各自の自律分散的な研究が中心であるから、それほど大きな問題は生じていないので、おおむね順調であった。 早めの対応として、第2回企画委員会を中止(延期)したのであるが、日本政府の対応に効果がなく、結果的には2020年4月7日には緊急事態宣言を発するまでの失態を犯したことを見るにつけ、むしろ、自粛したのは判断ミスであり、強行開催すべきだったと反省している。 また、2020年2~3月に予定していた海外現地調査は困難となり、この意味でも、予定通りの研究は進捗しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年待つから生じたCOVID-19によって、2020年に入ってからの研究は大幅に遅延してしまった。COVID-19が一定程度終息することを待って、国内外の現地調査や書庫・文書館などの史料調査を再開する予定である。一般に言われるように、COVID-19は年内にも第2波が想定され、2020年から21年に掛けてさらなる猛威も想定されている。したがって、感染の猛威が収まった間隙を縫って現地調査を行うとともに、それができない外出自粛モードにおいて研究が途絶えないように工夫する。また、遠隔通信会議方式を全面的に活用することによって、研究会が開催できない事態は回避する。 基本的には、今後も各人の自律分散による研究活動を続け、相互に対面連絡が取れないでも、結果として一定の共同研究が為し得るように、工夫を行う。最終年度には書籍(単行本)を刊行すべく、準備を進める。
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