研究課題/領域番号 |
19H01443
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 利之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40214423)
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研究分担者 |
飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285)
荒見 玲子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20610330)
内海 麻利 駒澤大学, 法学部, 教授 (60365533)
荒木田 岳 福島大学, 行政政策学類, 教授 (70313434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土地 / ムラ / 連携 / 冗長性 / 縮退 / 競争 / 排除 / 管理 |
研究実績の概要 |
2020年度は、国内外の現地調査を進める予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、国内外の広域往来、対面方式によるヒアリング調査、図書館利用制限などにより、大幅に予定を変更した。繰越を認められたが、限られた繰越期間では、事態の終熄はなされず、現地調査は大幅に制限された状態であった。そのために、文献調査やデスクトップ調査で可能な範囲での研究を進めた。また、オンライン化が急速に進んだため、研究会の開催はオンライン方式によって継続でき、また、ヒアリング調査も一定程度は行うことが出来た。このような制約のなかで、研究実施計画のうち、歴史研究や都市計画・福祉・教育分野及び、新たに災害分野での研究を主に進めた。 まず、歴史的に住民と区域・土地の関係について遡って研究を進め、近世的なムラ人に土地が従属するあり方が、近代化によって、土地によって住民が構成されることを明らかにしたが、実は、これはもともとは豊臣政権・太閤検地という近世支配の目指した姿であり、初期徳川政権も継承した関係あることが明らかになった。そのうえで、現在の人口減少・縮退時代の土地と人々の関係を「管理型」や競争への動きとして捉え、人口動態と関連付けながら、時代を俯瞰する視座を得た。 ついで、災害や困難事案という行政能力・資源が限られるなかでの住民の問題を採り上げて、住民がどのように把握されるのかを検証した。自然災害や公衆衛生パンデミックや生活困窮・福祉案件などは、資源が限られるがゆえに総合的に個人を把握する要求を高めるものであるが、現実の行政の制度・政策は機能的に分業せざるを得ず、様々な齟齬が発生する。そのときには、連携や統合が求められるものの、現実には資源の制約から排除をすることが起きやすいこと、制度・政策の狭間を連携で埋めることは容易ではなく、冗長性の確保がどうしても必要になることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
折からの新型コロナウイルス感染症の拡大によって、大幅に研究手法が制限された。繰越は認められたものの、感染症蔓延期間が長引いたために、結果的には、繰越の期間では限界があった。つまり、数ヶ月程度の感染拡大であれば、数ヶ月程度の延長を繰越で認められれば、ある程度の遅れは取り戻せる。しかし、1年を超えるような感染拡大に直面しては、現状のような1年未満の繰越だけでは対応が困難である。発生事由に応じて、数か年の繰越が認められなければ、なかなか所期の効果を発生しないとは考えられる。 そのようなかで、現地調査を大幅に削減したプランBに切り替えることになった。そこで、歴史研究・理論研究を中心に切り替えることによって、一定の成果を達成することはできた。また、外国現地調査ができなかったが、文献収集を事前に行う作業に時間をかけることができたので、現地調査と文献調査の時間が前後しただけとも考えられる(もっとも、この評価は2020年度段階のものであり、2021年度にも外国現地調査は依然として困難であり、リスクを軽減するにはより長期の研究期間がある方が容易であろう。 ICT化の進展により、デスクトップで出来ることもたくさんあり、さらに、コロナを奇貨として、さらなるデジタル変革が進んだこともあり、デスクトップ環境は急速に改善している。やはり、すでに指摘されてきたように、当初予期しないことへの備えが肝要であると、改めて痛感している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症は、数次の波を繰り返して、依然として継続している。そのため、感染終熄を待って、あるいは、客観的には変異株などで感染は終熄していないにもかかわらず、社会的経済的政治的な「自粛つかれ」と「慣れ」によって、社会的に感染蔓延を気にしないようになるのを待って、繰越を繰り返して、所期の現地調査研究を実行するというプランAだけではなく、そもそも、現地調査を不要とするプランBを主に切り替えることが必要であると思われる。もっとも、2021年度も、実際にはプランAを期待して研究を進めていたのであり、方針転進がいささか遅きに失した感もある。しかし、今からでも遅くないので、2022年度まで見据えて、大幅な現地調査なしで出来る範囲に研究を収斂させていきたい。
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