研究課題/領域番号 |
19H01444
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牧原 出 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00238891)
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研究分担者 |
御厨 貴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員教授 (00092338)
林 昌宏 常葉大学, 法学部, 准教授 (00632902)
早川 有紀 関西学院大学, 法学部, 准教授 (20775853)
伊藤 正次 首都大学東京, 法学政治学研究科, 教授 (40347258)
砂原 庸介 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40549680)
秋吉 貴雄 中央大学, 法学部, 教授 (50332862)
手塚 洋輔 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (60376671)
竹中 治堅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70313484)
小宮 京 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80451764)
飯尾 潤 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90241926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オーラル・ヒストリ- / 行政資源 / 独立機関 / 会計検査院 / 政権交代 |
研究実績の概要 |
本年度は理論的な検討として、フランスの政治哲学者ピエール・ロザンヴァロンの民主主義と正統性についての議論を再検討し、行政への専門性の高い市民による監視が行政の正統性と連動するという主張を再検討した。いわゆる狭義の評価機能のみならず、監視・統制機能、助言機能が全体として行政の正統性を構成する要因となるという前提のもと、以後の研究プロジェクトを展開する方向でさらに理論構築を図る。これをもとに会計検査院を対象に、その戦後における組織としての歴史的展開について俯瞰した上で、オーラル・ヒストリーを行った。そこでは、会計検査院元職員に、会計学理論と会計検査活動との差異、会計検査活動の改革問題、有識者会議の組織化と審議の分析といった諸点について具体的に聞き取った。最終的な分析と行う予定であったが、その前に新型コロナウイルスの感染が広がったため、さらにオーラル・ヒストリーを重ねつつ、これらの諸点からまずは政権交代以前の自民党長期政権のもとで形成された日本の会計検査機関の特性について国際比較の中で明らかにし、その政治的意義を検討する予定である。なお、オーラル・ヒ、ストリーの方法論についても並行して討議を重ねており、このプロジェクトでは、一般行政機関と比べて組織のミッションの理論化が進んでいるのが独立機関の特性であり、行政慣行やその形成過程についての聞き取りと並んで、理論についての聞き取りを重視したオーラル・ヒストリーが重要であることが確認できた。これも次期以降にその意義について検討を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの先行研究と歴史について再検討を行い、その上で会計検査院での執務経験者に2度にわたる濃密な聞き取りを行うことができた。その際には、全員で綿密に討議して、回答を精査し、今後の聞き取りに備えることができた。またオーラル・ヒストリー方法論についての検討も進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて各班ごとに研究会を開催(4回程度を予定)し、一方で歴史史料を分析し、他方で情報公開資料などを収集・分析することによって、行政資源ごとにその制度変容過程を解明するとともに、それを国際比較の理論の元に置きつつ、府省と独立機関との対立関係について、理解を深める。なお分析結果はたえず他のオーラル・ヒストリーと照合し、クロス・チェックを行う。その他、政策課題ごとのインタビューを5~7名について行うこととする。また本プロジェクトが対象とする政治化した官僚制を含めて、これと対抗的関係に立つ大蔵・内務系官僚機構、政党関係者へのオーラル・ヒストリー・プロジェクトがある程度蓄積された段階で、その内容についてレビューを行い、良質な談話記録を産出するオーラル・ヒストリー・プロジェクトの条件は何か、さらには談話記録に対していかなるクロス・チェックをすれば、昭和・平成期への新たな洞察が得られるか、インタビュー実施以前の段階における一般的な了解事項の限界はいかなる点から生じているのか、2010年代に実施されたオーラル・ヒストリーの特色と可能性とは何かといった諸点をテーマに共同研究を進める。これらを通じてオーラル・ヒストリーの方法論を総合的に検討し、研究の終了後その成果を公開する。
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