研究課題/領域番号 |
19H01460
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
東 大作 上智大学, グローバル教育センター, 教授 (90608168)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 和平調停 / 平和構築 / ウクライナ戦争 |
研究実績の概要 |
2020年度科研費はコロナで再々繰り越しし、2022年夏の海外調査で主に使用した。2022年8月から9月にかけ、サウジアラビアとトルコ、モルドバで講演や調査を実施。サウジでは2021年8月にタリバン暫定政権が発足し、米国の経済制裁等で未曽有の経済危機に陥ったアフガンについて、日本とサウジアラビア、さらに日本とOIC(イスラム協力機構)で人道支援に向けどんな協力が可能か懇談を続けた。サウジにあるOIC本部での私の講演会では、OICの幹部が多く参加し、タリクOIC副事務総長兼OICアフガン特使が司会を務めた。その後の昼食会も含めアフガン情勢について認識を共有し、今後も協力することで合意できた。その後トルコでは、ウクライナ戦争におけるロシアとウクライナの和平調停を続けているトルコ外交の専門家に聞き取りをし、ウクライナへの軍事ドローンの支援を続けているバイカル社を視察、トルコと国連が仲介して成立したウクライナとロシアの穀物輸出合意を実施する国連側の責任者にインタビューした。モルドバではウクライナ難民への支援の状況と課題について、モルドバ副首相や保健大臣、外務副大臣なども含め政府高官にインタビュー。現地で活動する日本のNGOの支援活動も視察し、13人のウクライナ難民の方に聞き取りをした。 現地調査の内容と、2019年からの科研「平和構築と政党」で調査を続けてきた和平調停や平和構築の調査をまとめ、2023年2月21日に岩波新書から「ウクライナ戦争をどう終わらせるか~和平調停の限界と可能性」を出版した。この本を受け朝日新聞の「新書速報」、読売新聞の文化欄で記事が掲載され、共同通信が廣瀬陽子慶応大学教授による書評を配信し全国の地方紙で掲載された。2月24日に放送されたNHK「国際報道」やNHK「日曜討論」にも出演し、本で提示した戦争終結への鍵について自分の考えを社会に伝える機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画時には予想できなかった、ロシアのウクライナ侵攻という事態を受けて、柔軟に海外調査の計画を変更し、この世界大戦へのリスクを伴った未曽有の事態に対して、これまでの和平調停や平和構築の研究の蓄積も重ねあわせて、一冊の本(「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」(岩波新書)に繋げることができたことは、予想以上の成果だったと考えている
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに利用した科研費を利用し、さらに、調査研究を進展させる。具体的には、ウクライナ戦争の終結に向けた国際的な議論を進める様々なイベントやワークショップを開催しつつ、南スーダンやアフガニスタンなど、これまで関わってきた平和構築についても、現地調査を続行していけるよう、研究費の獲得も含め努力していく。
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