研究課題/領域番号 |
19H01464
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
中西 久枝 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (40207832)
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研究分担者 |
中屋 昌子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30838850)
西 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50822889)
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (80283836)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トランスナショナル / 自己裁量権 / ジェンダー / イスラーム / 国際移動 |
研究実績の概要 |
ムスリム女性移住労働者に関する先行研究のレビューを実施した。その結果、本研究課題が取り上げる事例については、先行研究がかなり限定的であることがわかった。また代表者、分担者は、それぞれの役割分担に従って、文献及び現地調査を開始した。中西は、ロンドンにてイラン人女性のコミュニティについて予備調査を実施した結果、イラン人女性の集住状況や移住した経緯が極めて多様な背景から起こっていること、さらに移住している女性の年代が比較的高いことがわかった。本格調査では調査サイトの再検討も視野に入れる。山根は、2019年12月にパキスタンのカラーチーに赴き、在カラーチー日本国総領事館の協力を得て、ムスリム女性の労働に関する事前調査を実施した。西は、2020年2月から3月にかけて、マレーシアのクアラルンプールとタイのナラーティワート県でパイロット調査を実施した。中屋は、ウイグル女性が中国を離れるきっかけとなった信仰実践の統制の実態について検討した。特に、習近平政権以降に改訂された「宗教事務条例」に着目し、施行直後の2005年度版と改訂された2017年度版を比較検討し、改訂された条項内容や改訂に至った時代背景、および経緯について分析した。全体としては、マレーシアにおけるタイのムスリム女性の食堂の経営や新疆ウィグル自治区からトルコのイスタンブールへの女性の移住労働者の事例のように、女性の就労がインフォ―マル経済に集中していることがわかった。他方、イラン人及びパキスタン人女性の移住状況は必ずしもそうではなく、女性の生活空間がどう変化したかについては更なる女性の意識調査が必要であることが判明した。中西は、理論的な枠組みについての文献調査を実施した結果、オートノミーの測り方について、移住することに伴う社会的、心理的側面をどのようにくみ上げるかという点に配慮した研究手法が必要であると認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、ムスリム女性の国際移動にともなうオートノミーの変化を研究することに主眼がある。そのため、海外調査は不可欠な要素である。他方、2020年3月に予定していた予備調査が世界的なコロナ感染症拡大のため、実施できない状況に追い込まれたことで、文献研究の強化による研究資料の補填を試みた。しかしながら、実際には文献がほどんどない事例の方が多く、コロナ感染症拡大が進行していく場合には、研究手法を変更する必要性が生じた。本研究課題は、主として4つの事例研究から構成されるが、事例によっては、研究代表者及び分担者が現地に出向いて調査がむずかしい事態に備え、現地の研究者を通じて調査を依頼する方向性を模索した。研究協力者を見つけるところまではたどり着けたが、その実施は次年度以降にならざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の研究チームメンバーが現地調査を実施できる場合は、実施する。他方、それがむずかしい場合は、現地ですでに居住している研究者の協力を得て調査を実施してもらう方向性を模索することとした。具体的にはパキスタンにおける女性の移住に関する意識調査の実施やマレーシアかタイにおける移住経験のある女性に対するアンケート調査の実施などである。また、欧米に渡ったイラン人女性たちが自叙伝的な文学作品を多く出版しており、いわゆるディアスポラ文学とも呼ばれる状況が生まれていることが文献調査でわかった。それを受け、自叙伝的なムスリム女性の文学作品の収集とその分析を実施することも研究の視野に入れることとする。また中西が当初の計画で予定していたカナダもしくはアメリカでの現地調査が困難な場合は、いずれかの国でのムスリム移住労働者の対象を変えることも検討することで研究資料を確保することとした。
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