研究実績の概要 |
第一の研究テーマである、医療・介護費用の不確実性と福祉制度を明示的に取り入れた包括的な社会保障制度分析に関しては、Kitao(2015,JEDC), Kitao(2014,RED)等で用いられた世代重複型のマクロモデルをベースとして、新たに医療費リスクを組み込んだモデルを構築した。また、医療費に加えて年金・医療保険・介護保険制度および福祉制度を導入した。医療リスクについては、年齢・性別などの属性に応じた医療費の変遷を動学的マクロモデルのカリブレーションインプットとして用いる必要があり、東京大学市村研究室の協力のもとミクロデータの分析と推計作業を進めている。介護費用についても、より詳細なカリブレーションをすべく複数の分析手法を検討しつつ、介護給付費等実態統計の集計データを用いた年齢・性別ごとの介護支出をとりまとめ、モデルのインプットとして活用している。
第二のテーマである、高齢化社会における人的資本形成と労働参加を内生化したモデルによる社会保障制度改革と中長期的な生産性の分析に関しては、先行研究に基づき数量計算で用いるモデルの構築を進めている。Heckman, Lochner and Taber (1999,RED)やKitao, Ljungqvist and Sargent (2019)などと同様、ライフサイクルにおける人的資本形成を内生的に組み込んだモデルをベースとし、日本の労働市場において観察される雇用形態・年齢・性別などによって異なる賃金構造と労働参加を取り入れたモデルの検討を行っている。
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