研究課題/領域番号 |
19H01466
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 慎一 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00221531)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済成長理論 / 人口減少 / 技術進歩 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、経済成長理論の考え方を再考察することを通じて、人口減少や技術進歩がマクロ経済成長にいかなる影響を与えるかを理論と実証の両面から分析することである。このため、理論分析を行うグループとシミュレーション・実証分析を行うグループからなる研究グループを立ち上げ、分析を行った。 理論分析を行うグループは、研究代表者を中心に、田中茉莉子(武蔵野大学准教授)と奥村公貴(東京大学大学院)の2名の研究協力者から構成される。このグループでは、まず関連する先行研究をオーバービューした後、新古典派成長理論、内生的成長理論、および世代重複モデルなど伝統的な経済成長理論のフレームワークを使って、労働人口の減少が経済成長に与える影響を、均衡が内点解でなくなる条件や端点解となったときの経済動学のメカニズムなどを中心に多角的に考察した。また、このグループでは、アセモグルらのモデルを拡張することによって、労働力を代替する新技術の進歩が経済成長に与える影響を考察した。 一方、シミュレーション・実証分析を行うグループは、研究代表者に加えて、山田潤司(富山大学准教授)と中村純一(日本政策投資銀行・設備投資研究所)の2名の研究協力者から構成される。このグループでは、まず関連するデータを収集したのち、理論分析のグループが考察したモデルのカリブレーションを行い、その日本経済における妥当性を検討する。また、日本経済を主たる対象として、人口減少や新技術の進歩が、設備投資、貯蓄行動、インフレ率、および成長率などマクロ経済変数にいかなるインパクトを与えるかを実証的に推計し、理論分析の妥当性を検討した。加えて、財政、金融、労働、地方経済、労働市場にいかなる影響を与えるかも検討し、その日本経済へのインプリケーションを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論グループでは、先行研究をオーバービューした後、伝統的な経済成長理論のフレームワークを使って経済動学のメカニズムなどを中心に多角的に考察した。シミュレーション・実証分析を行うグループでは、関連データを収集したのち、理論分析のグループが考察したモデルの日本経済における妥当性を検討を進めた。いずれも今年1月までは順調に進行していたが、新型コロナ感染症の影響で、複数の国内出張と2回の国際会議での報告が急きょ延期になるなど計画の遅れが発生した。繰り越しの申請期日を過ぎてから延期が急きょ決定したため、昨年度は多額の未使用金が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
延期となった国内出張や国際会議での報告は、新型コロナ感染症が終息した後にできるだけ再開する予定だが、昨年度に発生した多額の未使用金が利用できない場合、研究活動には支障が生ずる可能性はある。ただ、限られた予算で、2つのグループの研究の取りまとめを、研究代表者がすべて行う。また、本研究のテーマは、今日の日本経済を考える上できわめて重要なものであるため、実務家や政策当局者と適宜意見交換を行うと同時に、その研究成果は、国際的な学術雑誌に投稿して刊行を目指すだけでなく、一般向けの解説書も執筆して社会還元を行うことも検討する。
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