研究課題/領域番号 |
19H01466
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 慎一 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00221531)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 長期停滞 / 経済成長 / 人工知能(AI) / 労働人口 / 賃金 |
研究実績の概要 |
本研究は、経済成長理論をさまざまな角度から再考察することを通じて、人口減少や新しい技術の進歩がマクロ経済成長に与える影響を理論的・実証的に分析することを目的とする。これまでの世界経済では正の人口成長率が通常だったため、人口成長率がマイナスの場合に何が起こるかを明示的に分析した先行研究は限られていた。また、労働力を代替するロボットや人工知能(AI)など新技術が経済成長に与える影響を考察した研究は始まったばかりである。本研究では、まず伝統的な経済成長理論の枠組みを使って、人口減少下での経済成長を、マイナスの人口成長率のもとでは均衡が端点解になりやすい点などを考慮して、理論的・実証的に考察した。次に、新技術が労働力を代替する経済成長モデルを使って、人口減少下での経済成長を考察した。その結果、労働力の減少を新技術が代替する経済には、イノベーションが成長率を高める正の側面だけでなく、さまざまな負の側面があることを解き明かした。特に注目すべき結果は、賃金への影響である。新技術が労働力を完全に代替するモデルでは、労働人口が減少し、新技術が促進された場合でも、賃金はほとんど変化しない。特に、新技術の開発に規模の経済性が存在する場合、労働人口の減少は経済成長を促進する一方で、新技術の価格の下落に伴って、賃金も下落させる性質がある。このため、経済が成長するもとでも、労働者への分配が低下する可能性があることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で、当初予定していた海外の研究者からのレビューを十分に受けることができなかったため、研究成果をまとめる作業が遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で当初予定していた海外の研究者からのレビューを十分に受けることができなかったが、コロナが収束に向かったことに伴い、海外の研究者からのレビューを進めることができるようになった。今後は、そのレビューの結果をもとに研究成果を最終的に論文にまとめ、研究を完成させる予定である。
|