研究課題/領域番号 |
19H01467
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
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研究分担者 |
外木 暁幸 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20709688)
佐藤 秀保 一橋大学, 経済研究所, 特任講師 (70805118)
上野 有子 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (80721498)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分離可能性 / 集計 / 家計消費 / 物価指数 |
研究実績の概要 |
2019年度は、(1)POSデータを用いた分離可能性の検証、及び(2)合理的な消費決定行動と整合的なデフレーターの構築、の二点を重点的に行った。(1)に関しては、研究分担者の佐藤秀保氏が中心となり、Lewbel(1996)の手法に準拠した分離可能性の検証を行った。具体的には、チーズ、バター、クリーム、アイスクリーム、ヨーグルト、練りミルク、脱脂粉乳、育児用粉ミルク及び乳酸菌飲料を対象とし、2006年1月最初の週から2016年3月最終週までの(535週)のデータを用いた。分析の結果、すべての財カテゴリについて理論整合的な財集計は統計的に支持されないという結果が得られている。既存研究の多くは代表的な財カテゴリへの集計を統計的に支持する傾向にあり、製品レベルデータを用いた場合には既存の研究蓄積と異なる結果が得られたことになる。これは、既存のカテゴリーレベルの集計変数作成が統計的には支持されないことを意味する。(2)に関しては、阿部が中心となり分析を行った。消費財を集計する際、一般的に行われているのは、カテゴリー単位の総支出額を物価指数でデフレートし、実質消費に変換し、それをあたかも一つの財とみなすことである。デフレーターが重要な役割を果たすことになるが、デフレーターとして伝統的な消費者物価指数を用いると、物価指数に推移性がないため、得られる実質消費にも推移性がなくなり、合理的な意思決定と矛盾してしまうという問題が1970年代にサミュエルソン達によりなされている。しかしながら、推移性をみたす物価指数で、経済理論と整合的なものは知られていない。阿部はQueensland大学の共同研究者と共同で、推移性をみたし、かつ経済理論と整合的な物価指数の作成を行い、2019年に国際コンファレンスを開き、そこで報告した。これは、現在査読付き雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の中心課題である、POSデータを用いた分離可能性の検証は順調に進んでおり、既に査読付き学術雑誌に論文が掲載されている。また、伝統的な集計方法である、物価指数を用いた支出総額の実質化、に関わる諸問題を解決する新たな物価指数の構築にめどがついたことは、大きな成果であると判断する。消費の異時点間の分離可能性の検証に関しても、データの蓄積は進んでいる。残る課題は、これらの研究成果を査読付き学術雑誌に掲載することであり、Top Journalへの掲載を目指し、論文の改善をはかっていく必要がある。消費の異時点間分離可能性の検証に関する研究論文はまだ始まったばかりであり、こちらは主要結果を吟味し、さらに分析を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
POSデータを用いた分離可能性の検証に関しては、(1)乳製品限定であったものを、さらに多くのカテゴリーに拡張すること、(2)Lewbelよりもさらに一般的なVarianによるノンパラメトリック推計による分離可能性の検証を行うこと、を計画している。また、推移性を満たす物価指数構築に関しては、今まではPOSデータにその理論を応用していたが、さらに国際間物価指数や国民経済計算のコモディティフローのデータに応用し、さらにその応用先を拡大していく。また、物価指数の理論として、基数的効用ではなく、序数的効用に依拠する物価指数の構築を目指す。
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