研究課題/領域番号 |
19H01475
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
牛島 光一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80707901)
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研究分担者 |
清田 耕造 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 教授 (10306863)
小西 祥文 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (40597655)
岡崎 哲二 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90183029)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 市場統合 / 経路依存 / 明治の鉄道建設 / 一物一価 / 要素価格均等化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、明治期における鉄道敷設による市場統合の経済効果がどの程度だったか、また、その経済効果にどのような経路依存性があったのかを明らかにすることで、今後の経済・開発政策のデザインにとって多くの示唆を富む質の高いエビデンスを提示することである。
データベース構築:本研究を遂行にあたり、歴史資料のデジタイズおよび時空間情報の作成に莫大なコストをかける必要がある。総計で4000人時必要と推計しており、令和2年度は1260人時(令和元年度と合わせて2560人時)をかけた。令和元年度に作成した地域パネルデータに、地域の属性情報として人口情報などを入力し、これが完成した。また、これ以外にも農業基礎統計より各県の穀物生産高、耕地面積、帝国統計年鑑より各県の農業労働者の賃金(男女別)、地価(田・畑・住宅別)、天候情報、死亡者数、病気別病人数、鉄道輸送主要貨物数量より大正13年の府県間の財別の輸送データ(発着別)を入力した。
鉄道敷設による市場統合:鉄道敷設が市場統合をどの程度促したかを調べるにあたり、市場間の7財(米・大麦・酒・醤油・木炭・薪・塩)の価格収束の程度、既存の輸送手段の存在、そして、市場間の距離を考慮した分析に加え、米の生産量や労働者の賃金や農地価格といった要素価格に対する鉄道の影響を調べた。分析の結果、単位当たりの重量が重い財ほど鉄道敷設によって価格収束する傾向があること、しかし、海運が盛んな地域ではその傾向がみられないこと、(貿易理論では十分に説明されない)ある一定以上の距離では価格収束が起こらないこと、が確認された。また、米の生産量が鉄道敷設以前から多かった地域ほど、米の生産量が増加し、田の地価が上昇している事がわかった。その一方で農業労働者の賃金に変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実績は、研究会での報告を1件行った。その他の成果として、デジタイズ環境の構築・維持、研究補助者による入力作業があった。コロナ禍の影響で、昨年度構築したデータベース入力環境の維持が懸念されたが、研究補助者のリモートワーク環境が整っていたため、コミュニケーションの難しさはあったものの、当初想定程度の業務を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト3年目にあたる令和3年度は、引き続きデータベースの構築作業を行いつつ、研究成果をまとめる。データ別の構築作業としては、産業別労働者数、年齢別人口、貯蓄情報などの情報を可能な限り入力する。 先行研究と同様の手続きでアイスバーグモデルに基づく一物一価の分析を行ってきたが、そもそもこの方法では因果関係を識別できていない可能性が浮上した。そのため、モデルの見直しを行う。また、比較優位に基づく要素価格均等化などについて検討するために、地域の特化係数を作成することで、識別戦略の精緻化を目指す。
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