研究課題/領域番号 |
19H01476
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 綾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20537138)
|
研究分担者 |
李 根雨 一橋大学, 経済研究所, 講師 (80836643)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 情報伝播 / 社会ネットワーク / 農業外部性 / 無作為化比較対照試験 / 水質 / ベトナム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、農家間の農業技術に関する情報伝達の動機を探り、今後の効果的な農業技術の普及方法の考察に資することにある。特に、ベトナムのエビ養殖産業を事例とし、農業に存在する外部性と、農家間の社会ネットワークに着目し、それらが情報の伝播ルートにどのような影響を与えるかを検証する。 研究初年度の2019年度は、8月に共同研究者や研究協力者の全員が調査地に入り、現地政府関係者に面会した後、様々な規模の養殖農家や商人を訪問し、情報収集をした。2017年の調査時に比べて、集約的農法が進化し、大規模化し、養殖地の設備もアップグレードされていた一方で、その変化についていけなくなった農家は粗放的農法に変更したり、エビ養殖業から撤退していることが分かった。研究者間で、最新の状況に基づいてベースライン調査の質問項目を議論し、その後の社会実験の方法も具体的に話し合った。 9月~11月の間に、現地の貿易大学に委託して約660人のエビ養殖農家に対する家計調査を行い、養殖農家の社会経済的特性や具体的な養殖農法などに関するデータを収集した。また、12月に社会実験で農家に貸与する予定の水質計の選定と購入を行った。さらに、2020年1月に再度共同研究者たちと現地に赴き、水質計やマニュアル等を現地に運搬した。その際に、最初に水質計を貸与する農家を集めてワークショップを行い、現地専門家による水質管理の方法に関する講義と水質計の使用方法に関する指導を行った。農家に配布する同意書や貸与する機器の備品の準備などを行い、今後の予定に関して研究者間で確認するとともに、現地政府担当官にもその概要を報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画では、①ベースライン調査を実施し、②社会実験を開始することとしていた。上述したように、①については、事前調査を踏まえて作成した調査票をもとにベースライン調査は完了した。その後、データの確認を行い、不備のあった情報について現地調査員に追加で電話調査を依頼し、その作業も完了した。現在、データクリーニングを行っている。②の社会実験については、機器の購入と現地への運搬、現地でのワークショップの実施、最初の数名の農家への水質計の貸与は完了することができた。そのため、全体としての研究の進捗状況はおおむね順調であると言ってよいと考える。 一方で、②については、3月に再度研究共同者が現地を訪問し、残りの水質計の農家への配布や現地の状況を把握している調査員との協議を行う予定だったところ、2月辺りから新型コロナ肺炎の世界的な蔓延により、外国人のベトナム入国は禁止され、3月に現地に入ることが不可能となった。そのため、3月の出張はキャンセルせざるを得なくなり、社会実験を開始することはできた一方、その後の水質計の貸与は一時停止されている状況である。新型コロナ肺炎の状況が収束し次第、社会実験を再度開始したい。
|
今後の研究の推進方策 |
前述の通り、社会実験は開始されたが途中で一時停止せざるを得ない状況になったため、現在はそのまま停止中である。一方で、現地の大学の共同研究者によると、夏ごろには調査も再開できそうだということなので、状況を見ながら再開したい。ベトナムへの入国は引き続き制限されているので、現地の共同研究者を中心に社会実験の実施と第二回目の調査を行っていきたい。 調査の対象としている農家の養殖業や生活にも新型コロナ肺炎の影響が及んでいると推測されるため、第二回調査を行い、ベースラインの調査データと比較し、どのような農家に大きな影響が出ているかを分析することも検討している。また、新型コロナ肺炎と社会実験の影響を切り分けるため、第二回目の調査を行った後に社会実験を本格的に開始させることも検討している。
|