研究課題/領域番号 |
19H01482
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高野 久紀 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (40450548)
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研究分担者 |
有本 寛 一橋大学, 経済研究所, 教授 (20526470)
ラランディソン ツィラヴ 京都大学, 経済学研究科, 特定講師 (60807478)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 市場の機能 |
研究実績の概要 |
マダガスカルの有力なコメ生産地であるアロチャ地方で収集した、他地域からコメを買い付けに来るトラックの調査、コメ卸売業者の日次取引データ、ブローカーの参与観察を統合した分析を行った。 トラック調査の結果、精米を買い付ける場合はブローカーを使わず直接精米業者と取引するが、籾米を買い付ける場合はブローカーを使って売り手を探すという行動パターンが観察された。質の高い精米所の数は限られているため、精米を買い付ける場合にはサーチすべき売り手の数は少ないが、籾米の場合には農家から直接買い付けることも少なくなく、潜在的な売り手の数が非常に多いため、その中から安い価格で売ってくれる売り手を探すには、ブローカーを使う必要がある。 ブローカーを使った場合、コメの買い付けは1日以内で完了することがほとんどであり、ブローカーはかなりの数の潜在的売り手の情報を持っていることを示唆している。しかし短期間で取引を早く完了できることは、必ずしも効率的な情報ネットワークを意味しない。ブローカーの情報ネットワークが地理的に限定されている場合、他の地域でより安い価格でコメを仕入れることが可能でも、その情報をブローカーが知らなければ、その取引を実現できないからだ。経済学では市場価格は需要と供給が一致するように決まると想定されるが、供給者である売り手がどこにいるか分からなければ、「均衡価格」より高い価格での取引と「均衡価格」より低い価格での取引が同時に観察されうる。実際、距離による輸送コストを調整した上での取引価格の差を見るとある程度のばらつきが観察され、少なくない割合で取引価格に5%程度の差が観察された。このことは、地域間裁定が不十分な一因がブローカーの情報ネットワークが地理的に限定されていることにあることを示唆する。 また、バングラデシュで収集したデータを用いて農家に対する最適融資契約を考察した研究を各学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19で調査の実施が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
トラックのブローカーを使ったサーチ行動をモデル化し、それにブローカーのネットワークの重なりを考慮して、ネットワークの重なり具合と価格のばらつきの程度から、市場の効率性を推定する。 一方、ベトナムの家計調査のデータを用いた社会の流動性の推定、およびベトナムの企業データと産業連関データを用いたWTO加入を契機としたグローバル化の進展が資源配分の効率性に与えた分析を完了させる。
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