研究課題/領域番号 |
19H01487
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 災害(コロナショック含む) / 企業・労働者の異質性 / 産業集積と地域経済 / 国際貿易 / デジタル経済 / 地域経済と地域金融市場 / 防災 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画に従い、以下の5点を研究し実績をあげた。 ①ミクロデータの構築:新型コロナウイルス感染症の蔓延は広義の大規模自然災害ととらえられる。昨年度に引き続きNIRA総研との共同により大規模な就業者調査を今年度は3回実施しデータを作成した。感染症対策に有効なテレワークやデジタル化に関して調査した。さらに今年度は防災意識や災害経験に関しても調査した。調査結果をNIRA総研から速報や報告書の形で社会に発信するとともに、論文やレポートを作成し政策提言も行った。メディアや政府の白書、審議会でも大きく取り上げられ、参議院でのデジタル関連法案審議の参考人として研究成果を報告した。②空間経済分析:自然災害がFDIの立地や産業集積にどのように影響を与えるかについて理論モデルを構築しジャーナル(ERE)に掲載された。また、最近の産業集積政策である「産業クラスター計画」に関して政策評価を行い、ジャーナル(CJE)に掲載された。③国際経済分析:グローバル化した世界の中で日本において労働人口の確保や自由貿易は重要な問題である。慶應家計パネル調査(KHPS)を用いて、移民受け入れや貿易自由化に関する日本人の意識を分析し、2本の論文がジャーナル(JWE, RWE)に掲載された。④コロナ感染症下での人々の行動に関する分析。上記の一連の就業者実態調査を基に論文を作成した。テレワークの効率性に関する論文、ワクチン接種の行動に関する論文、ワクチンに対する考え方の日独比較の論文をそれぞれジャーナル(AEP,Vaccines,FrontierPubHel)に採択され掲載した。⑤地域経済分析: 独自に作成してきた長期府県別データを用いて、地域資本市場が国内の府県間で分断されていて、バブル崩壊という負のショックのダメージの規模や回復過程に府県間で大きな違いがあることを実証し、ジャーナル(JIE)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画の内容に従って研究をしっかり進めており、特に次の三点から進捗状況は順調であると言える。第一に、英文による理論・実証論文が数多く査証付きの国際的な学術誌・ジャーナルに採択され掲載、あるいは近刊となっている。研究実績は着実に積みあがってきており、順調に進んでいると言える。特にJournal of International EconomicsやCanadian Journal of Economicsなど一流のジャーナルに刊行されている。また、コロナに関する論文は経済学の領域を超えて公衆衛生のジャーナル(VaccinesやFrontiers in Public Health)にも刊行することができた。第二に、ミクロデータの作成・調査として、コロナ禍における大規模な就業者実態調査を行っており、様々なレポートや論文、政策提言書を作成した。社会的に大きな注目を集めており、日本経済新聞や各種機関紙などにデジタル経済に関して寄稿した。また、政府の報告書や白書にも掲載されている。参議院内閣委員会におけるデジタル関連法案審議にて参考人として招致され研究の成果を報告した。研究成果の社会的な還元も順調に進んでいる。第三に2021年度もコロナ禍にあり、海外出張ができない状況であるが、様々なデジタルツールを駆使し、海外共同研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も引き続き現在の研究を推進していく。就業者大規模調査を予算や人員をしっかり確保し継続していく。コロナ禍の下でのデジタル経済や家計・企業の行動変化を調査し、分析し論文を引き続き作成していく。特に2020年度からのデータが積みあがってきている状況なので、分析や論文作成に注力していく。さらに今年度は就業者サイドのみならず企業サイドに関するデジタル化の調査と研究を行っていく。これにより、空間経済学(企業組織や立地、都市問題)や国際経済学(グローバリゼーションと労働・仕事の分業など)の視点でより深い分析が可能となるだろう。また、広義の大規模自然災害という視点で、どうコロナの影響を計測するか、さらに疫病対策、防災や持続性などを研究していく。また、今までの調査結果をその都度、逐一公開し、NIRA総研と連携し引き続き、社会にしっかり発信していく。理論分析・実証分析においても現在の研究体制を継続し国際共同研究を積極的に進め、質の高い論文を英文にて作成し、海外の査証付き学術誌・ジャーナルに投稿していく。
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