近年、開発途上国において、携帯電話やSocial Networking Service(SNS)、携帯アプリといったデジタル技術が急速に広がりつつある。開発の分野では、農業生産における情報の非対称性の問題への対応策として、デジタル技術の活用が期待されている一方、その効果は限定的である。本研究は、デジタル技術の中で、どのような媒体が効果的に情報を共有できるのか、デジタル技術を利用できない集団に対して効率的に情報共有を促す条件は何かという問いに注目し、社会実験を行うことで技術の効果を検証した。 エチオピアにおいて、携帯電話をランダムに配布するRandomized Controlled Trial(RCT)を実施し、配布対象となった農家世帯に対してSNSの一つであるFacebookを介して情報の発信を行った。その際、Facebookで情報を提供する情報提供者の属性を2つに分けた。一方のグループでは、同じ国籍のエチオピア人から情報が与えられ、もう片方では、外国人から情報が提供された。 分析の結果、Facebook上で同じ国籍の情報提供者から情報を与えられた農家において、農産物の売値が約10%上昇する結果が得られた。一方、外国人グループでは有意な結果は得られなかった。これは、オンライン上のコミュニティであったとしても、情報の利用には、情報提供者との同質が重要であることを示唆している。また、情報提供による効果は、特に女性で貧困世帯において効果が大きかった。これは、実験介入以前において、これらの属性の農家は社会的に孤立しており、情報へのアクセスが限定的であったため、介入によって情報へのアクセスが改善したことで効果が大きかったと推測される。
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