研究課題/領域番号 |
19H01495
|
研究機関 | 公益財団法人アジア成長研究所 |
研究代表者 |
八田 達夫 公益財団法人アジア成長研究所, 研究部, 所長 (70008647)
|
研究分担者 |
田村 一軌 公益財団法人アジア成長研究所, 調査部, 主任研究員 (90426049)
戴 二彪 公益財団法人アジア成長研究所, 研究部, 教授 (20300840)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 高度経済成長 / 大都市への人口流入 / 中・高卒業者数の推移 / 国土政策 / 地域間再分配政策 |
研究実績の概要 |
1960年代の日本では、生産性の低い地方から生産性の高い三大都市圏へと労働力が移動したことが経済成長を高めた。しかし1974年以降この人口移動がピークのほぼ10分の1程度にまで低下し、経済成長率も急激に低下した。都市への人口流入低下の原因としては、①地方における中学高校卒業者数の激減と、②1970年代中盤以降の「国土の均衡ある発展」の概念に基づいた地方への再分配が都市と地方との賃金差を引き下げたこととが考えられる。本研究の目的はこの2つの要因の相対的な大きさを計量的に明らかにしようとするものである。それによって、1970年代以降の経済成長率の低下のうち、どの部分が再分配政策を正すことで阻止し得るものかを明らかにする。 2019年度は、前述した目的を達成するために各種データを取り揃え、まず、質的な分析を行った。これにより、以下が判明した。 ①地方圏から大都市圏への人口純移動が70年代初頭に激減したが、この激減のかなりの部分は地方から大都市圏への移住の変化によって説明できること。 ②中学高校新卒者の地方圏から大都市圏への人口移動は高度成長期であっても全体の20%に過ぎず、それ以外の人口移動の変動が重要な役割を示していること。 以上のことを確認したうえ、2019年度は、地方圏から大都市圏への人口純移動ではなく、人口粗移動(以下単に「人口移動」という)を、しかも(新卒に限らず)すべての年齢の人口移動を分析対象とした。これによって両地域間の①所得格差、②社会資本格差及び③その他の生活環境指標の比率の変化が、1960年から現在までの地方圏から大都市圏への人口移動の約97%を説明してくれることが分かった。この分析の政策的な含意は、この当時行われていた国土の均衡ある発展政策に基づいた地方への再分配が、70年代初頭の大都市への人口移動の急減の根本的な原因であるということである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種データを取り揃え、順調に分析業務を行った。ディスカッションペーパー「大都市への人口移動の決定要因としての地方人口と地域間所得格差」(八田達夫・田村一軌、2020)も完成したが、2019年度はコロナウイルスによる自粛のため、セミナーなどでの発表ができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、地方圏から大都市圏への人口移動をさらに年齢別に分析する。それによって、新卒とそれ以外との人口移動に決定する要因の差異を分析する。更に高校卒の進学移動の行動に関しても計量的な分析を試みる。その上で大都市圏から地方への人口移動の分析にも手を付ける。これによって、国土の均衡ある発展政策が、各年齢層や出身地域別にどの様な異なる効果を持つかを分析する。 また、学会・セミナーでの研究報告活動を活発に行う予定である。
|