研究課題/領域番号 |
19H01500
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
土居 丈朗 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60302783)
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研究分担者 |
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10553141)
別所 俊一郎 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (90436741)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 財政健全化 / 地方財政 / 財政ルール / 地方税 / 地方分権改革 |
研究実績の概要 |
2020年度は,地方公会計改革に関する財務書類の導入状況について,市町村を対象としたデータ構築及び計量的手法を用いた実証分析を実施した.分析では,主に,地方公会計制度改革における財務諸表の導入が市町村財政に与える影響の実証分析に取り組んだ.実証分析後に論文を執筆し,国内・国際学会での研究報告を実施した.ただし,新型コロナウィルスの影響により,現地での学会開催が困難であったため,研究報告は全てオンライン学会にて実施した.また,当初,予定していた国内外におけるヒアリング調査や資料収集等は2021年度以降に延期することとなった. 加えて,前年度に引き続いて,地方税である個人住民税が家計に与える影響を,日本家計パネル調査(Japan Household Panel Survey, JHPS)の家計の個票データを用いてマイクロシミュレーション分析を行った.マイクロシミュレーション分析では,2010年代にわが国で企画された一連の個人所得課税改革を対象とした.つまり,2013年所得に対する給与所得控除の上限新設,2014年所得に対する金融所得課税の一体化,2015年所得に対する所得税の最高税率の引上げ,2016年所得と2017年所得に対する給与所得控除の引下げ,2018年所得に対する配偶者控除・配偶者特別控除の見直し,2020年所得に対する基礎控除の引き上げと給与所得控除と公的年金等控除の引下げである(2012年までの控除見直しは子ども手当・児童手当の給付と連動しているために対象としなかった).これらの各々の税制改革を通じて個人住民税負担が変わり,それが各世帯の可処分所得にどのように影響を与えたかを分析した.この分析から,地方税を含む家計の税負担と世帯所得の状況を把握することを通じて,地方財政の健全化に向けて税収がどのような役割が果たせるかを解明する手がかりを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究テーマに関連する国内外におけるヒアリング調査や資料収集は,2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により実行が不可能だったためである。可能ならば,2021年度に実施することを予定している.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に引き続き,地方公会計制度改革に関する分析及び学会における研究報告に取り組むとともに,論文を国際的な査読付き学術誌に投稿する予定である.また,既存研究では十分に活用されてこなかった地方公共団体の予算・決算データの整備や,キャッシュフロー計算書等の財務状況把握のためのデータ収集を行って,実証分析に取り組む予定である.コロナ禍における世界の状況にも依存するが,可能な範囲で,国際学会での研究報告及び実務者に対するヒアリング調査を実施したいと考えている. 加えて,引き続き,地方税を含む家計の税負担と世帯所得の状況から,地方自治体が得る税収がどこまで増やせるかを見極めるとともに,必要な追加の政策手段の実行可能性について分析する.合わせて,国と地方の財政関係についても焦点を当て,国から地方自治体への財政移転の政治的決定要因についての分析結果を取りまとめる.
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