研究実績の概要 |
初年度にあたる2019年度においては、主として2つの分析を行った。第一は、製造業の企業の人事・勤怠データを用いて働き方とメンタルヘルスとの関係を検証した。このデータは、労働時間に関する回答誤差やサンプル脱落が少ない人事パネルデータを用いていることが特徴である。観測不能な個人属性を考慮した上で、4種類の働き方の指標(①残業時間、②深夜勤務時間、③短い勤務間インターバルの頻度、④週末勤務の頻度)とメンタルヘルスの関係を検証した。この分析は、査読つき英文雑誌に採択された("Mental health effects of long work hours, night and weekend work, and short rest periods," Social Science & Medicine, 246, 2020)。第二は、働き方改革による長時間労働是正が、労働者の人的資本投資にどのような影響をもたらすかについて分析した。具体的には、1970年代から現代までの長期データを用いて日本の労働者の人的資本投資時間の推移を観察するとともに、2016年以降のパネルデータを利用して、働き方改革の推進により、労働時間の減少によって生じた余暇時間の増加を人々は自己研鑽という投資の時間に振り向けているのかを検証した。分析は、ディスカッションペーパーとして発刊した(「長時間労働是正と人的資本投資との関係」RIETI Discussion Paper, No.19-J-022, Research Institute of Economy, Trade & Industry, 2019)。次年度以降にさらに分析を深める予定である。
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