研究課題/領域番号 |
19H01519
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
安本 雅典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40293526)
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研究分担者 |
吉岡 徹 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 講師 (60771277)
糸久 正人 法政大学, 社会学部, 准教授 (60609949)
生稲 史彦 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10377046)
真鍋 誠司 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (10346249)
立本 博文 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (80361674)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協調的な標準化 / 知識 / コントロール / アーキテクチャ / ネットワーク分析 / オープン化 / 標準仕様 / 標準必須特許(SEP) |
研究実績の概要 |
本年度は、文献検討や予備調査を通じてコントロールやガバナンスの概念の整理を進めつつ、「①協調的な技術開発と標準化を担保する制度・仕組みとプロセス」を検討した。具体的には、企業間の協調が進んでいる、移動体通信、自動運転、産業IoTといった複雑なシステムについて、公刊資料や関係者へのインタビューを通じて、企業間にわたる技術の標準化、および関連技術の権利化が、どのような制度や仕組みのもとで進められているのかについて確認した。 続いて、以上の①の整理をふまえつつ、「②企業による協調的な標準化と権利確保」の予備的な検討を開始した。より具体的には、まず、移動体通信のような複雑なシステムを対象に、標準化団体(例えば3GPP)のデータベースを用いて標準仕様とその提案企業についてのデータを整理し、検討を試みた。これにより、標準化によりオープン化され共有されている技術システムについて、企業内外にわたる技術や知識のあり方(例えば技術システムのアーキテクチャ)やそのなかでの企業のポジションの理解を試みた。 加えて、いかに企業が標準仕様に関わる技術について、実装を可能にする権利を確保してきたのかについて、標準仕様に対応する標準必須特許のデータ(ETSIのデータベースから抽出)を用いて試行的に検討した。こうした検討により、標準仕様の提案と技術の特許化(必須特許化)とが必ずしも正に相関しておらず、専ら権利確保に重点を置いている有力な企業が存在することが示された。さらに、移動体通信や自動運転について、必須特許/独自特許のデータの分析を行うことで、有力な企業は多様な技術を大量に保持して権利を確保するだけでなく、実装に不可欠な多様な技術間にわたる知識を構築していることが分かった。本年度は、以上の作業により、オープンな技術のガバナンスやコントロールを可能にする、技術の権利確保や知識のあり方について見当をつけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献レビュー、調査・分析、実務家との意見交換を進めることにより、基本的な概念・枠組みの整理とデータ(公開資料、ヒアリング成果、量的データ)の蓄積・検討を進めることができた。また、これらについて途中成果を国内外で発表することもできた。一方、関連する公的な委員会・会合、実務家との会合・調整、学内・学会業務等に時間を要したことから、予定していたデータ分析、成果執筆 、海外ジャーナルを含む論文公刊に多少遅れが生じている。これらの点から、(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オープンな技術のガバナンスやコントロールについての先行研究の確認、データの整理(とくに特許データの更新)と分析、および調査による補完をさらに進めることで、研究を深める。来年度以降は、とくに標準化を通じてオープン化される技術について、いかに企業が標準仕様の策定・提案を進め、また関連する技術の権利を確保しているのかについてネットワーク分析等による検討を行う。こうして、企業内外にわたる技術や知識のあり方(例えば技術システムのアーキテクチャ)やそのなかでの企業のポジションを理解することで、本来共有されているはずのオープンな技術について、どのような企業が実質的なオーナーシップを確保し、ガバナンスやコントロールの主導権を握ることができるのか、知識の面から明らかにすることが可能になると考えられる。 一方で、実際の産業や技術の発達の方向性は、実装のために不可欠な技術の標準必須特許の引用のネットワークによって理解することができる。再来年度以降、このようなネットワークにおいて、産業や技術の発達を左右する重要なイノベーションを生み出している企業についての理解を進めることで、そうした企業によっていかにオープンな技術のガバナンスやコントロールが行われているのかを明らかにしていくことが考えられる。 以上の観点から、とくに移動体通信や自動運転/産業システムのデータ系について、制度や仕組みをふまえて、各分野の標準仕様、必須特許、独自特許のデータを関連付けて、時系列的、統計的に分析を進める。また、成果については、国内外で講演や書籍・記事の執筆による社会的発信や関連する政策・戦略について実践的な検討・提案を進めるとともに、学会・研究会での発表、海外の論文への投稿、そして成果を集約した書籍の企画を進める。また、昨年度に引き続き、海外で投稿中の論文の刊行を目指す。
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備考 |
来年度に、関連webページを改訂の上、公開予定である。
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