研究課題/領域番号 |
19H01540
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
上田 隆穂 学習院大学, 経済学部, 教授 (40176590)
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研究分担者 |
伊藤 匡美 亜細亜大学, 経営学部, 教授 (20523012)
小林 哲 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60225521)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域創生 / コスタリカ・コーヒー / 美味しさ / おせち / 日本酒&国産チーズ / クロモジ / ジビエ / 地域ブランド |
研究実績の概要 |
2019年度末に訪れたコスタリカにおいて、小規模コーヒーファーム(Micro Mill)の取材を行ったので、その地域活性化事例について論文『小規模コーヒーファームのイノベーティブな成長戦略と地域創生~コスタリカの小規模コーヒーファーム(Micro Mill)、リベンス農園の調査から~』にまとめた。また地域産品ブランドに関する美味しさに関する研究を行い、それが情報によって大きく左右されるとの結果を導き、論文『地域特産物の『美味しさ』を増幅する『ふるさと情報』の考察』としてまとめた。また食による地域活性化に関する招待論文『持続可能性を高める、食による地域創生』をまとめた。 さらに、上田隆穂・澁谷覚・西原彰浩の共著「グラフィックマーケティング」(新世社)も当該研究年度に出版したが、この中でも地域活性化の章を記し、これまでの知見をまとめて執筆した。これらの執筆例は、科研費研究で目指している方向性、すなわち食を起点とした地域創生研究に沿った内容のものである。このほかプレイス・ブランド研究会(日本マーケティング学会)にも参加し、地域活性化について議論を重ねた。 またコロナ禍のために外国渡航禁止(大学)であったため地域活性化に関するインタビュー調査のために以下の地域を訪問した。順に2020年6月に沖縄南大東島、7月はじめに宮古島、7月末に石垣島、8月に北海道利尻島・礼文島に訪問、10月に岩手県盛岡市、11月に北海道函館市、鹿児島県沖永良部島、岐阜県恵那市、12月に岐阜県多治見市、2021年3月に石垣島・武富島西表島。これらの訪問経験は上記の論文に生かされている。またこれ以外にも8月に石川県能登を訪問し、おせち料理制作による地域活性化の糸口を探して、関係者と対話を重ねた。これは目指す方向性のもう1つである一地域を想定したパイロットプランの作成関連である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文化の面においては、おおむね順調に進展しており、コロナ禍により外国に行けなかった分を国内訪問で代替しており、食を起点とした地域創生研究では研究を重ねつつある。上記で挙げた論文で味を構成する要素のうち、情報の役割に関する研究を実証的に進め、地域産品ブランド、とくに地域フードブランドに関して大いに進展があった。これらの研究は、地域フードブランドから実際の地域訪問へとつながっていく研究に進展していくものと考えられる。 問題は一地域を想定したパイロットプランの作成の面であり、コラボ企業であるおせち一貫生産メーカーである銀の森コーポレーションとはコラボレーションの話が進展したが、委託生産の形でしか受けないという点で話の食い違いがあり、資金的リスクを負わないという点が明らかとなり、パイロット研究実現性において厳しい状況となった。また能登および沖縄石垣島でも地域における小規模総菜生産業者のおせちプロジェクトへの消極性が目立ち、おせちによる地域活性化パイロット研究実現においての進展が悪い点である。能登および石垣島では行政の協力も得て、行政とともに積極的に動き、対話を重ねるもこの年度の進展ははかばかしくなかった。沖縄のおせち製造による地域活性化においては航空会社のJTA(日本トランスオーシャン航空株式会社)の協力も取り付け、製造おせちの部分買取りや機内誌への宣伝協力も取り付けたが、肝心の製造面での進展がなかった。この点を打開するための施策を鋭意模索中である。
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今後の研究の推進方策 |
当該科研費研究のテーマは上述のように「食を起点とした地域創生研究」と「一地域を想定したパイロットプランの作成」の2つに分かれている。前者に関しては、さらに進展させて、実際に沖縄を想定し、おせち料理のパーツである総菜の製造販売を数多くの地域企業群で行う際、特に大都市において販売を行うときに、どのような情報を付加して販売すると効果が上がるかの研究に進展させていく予定である。また消費者情報処理の視点を研究の重要な要素として取り入れ、特に関与や制御焦点理論を用いることにより深みのある研究にしていく予定である。インターネットによる大規模アンケートをとり、共分散構造分析などを用いて分析していきたい。これらを実施することにより、「食を起点とした地域創生研究」と「一地域を想定したパイロットプランの作成」の両者をつなげる研究になることを期待している。 さらに後者の「一地域を想定したパイロットプランの作成」の方に関しては、コラボ先のおせち一貫生産メーカーと協力し、沖縄において対応可能な提携先を探し、説得の対話を進めて行く予定である。またもう1つのパイロット実験予定地域である能登地方においても地元におけるコーディネーターとしての提携先を探し、対話を通じて可能性を探っていく予定である。 またさらに外国への訪問が、大学からの渡航許可がでて、可能になった場合にはアラスカ方面における先住民と小規模ながら意欲的な企業とのコラボでの地域活性化である、新規冷凍技術による魚類の鮮度向上と日本への新規輸送システムによるプロジェクトについて取材する予定である。
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