研究課題/領域番号 |
19H01553
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
薄井 彰 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (90193870)
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研究分担者 |
池田 昌幸 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (20222903)
鈴木 智英 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50813648)
田中 宗 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40507836)
町田 祥弘 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (50267431)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 会計 / 監査 |
研究実績の概要 |
情報開示制度の研究領域については、(1)デファクトスタンダード化の要因や構造を分析・総合し、(2)その理解に基づき制度設計の原理を応用して、社会的に合意されうる望ましい経営・経済データシステムの在り方を提案する。本年度には、資本主義の深化する中、また株式の発行市場よりも流通市場が活発化する中、ITの進化がもたらす新たな問題を探索し定式化を試みた。また監査制度に関して、2020年11月に監査基準の改訂が実施されたことを受けて、今後求められる会計上の見積りへの監査上の対応の検討や、今後予想される内部統制報告制度の見直し、ならびに会社法および金融商品取引法を問わず財務報告制度全体の見直しを検討した。ファイナンス理論は、株価を拡散過程と捉えてドリフトとボラティリティの間に存在するリスク・リターンのトレードオフを研究対象とする。その際、大量の株価データは、ドリフトの推定には殆ど役立たないことが知られている。ファイナンスの研究領域については、瞬間的な共分散、および資本資産価格理論におけるベータの推定においても、ビッグデータの存在は推定の改善には貢献するかどうかを検討した。ビッグデータ解析の研究領域ついては、次世代コンピュータの中でも、組合せ最適化問題に対する高効率解法として期待されるイジングマシンに着目し、多様な組合せ最適化問題に対応するために必須なアルゴリズムである「埋め込みアルゴリズム」について統計力学的研究を行った。その結果、イジングマシンの性能を引き出すパラメータ調整方法を構築することに成功した。また、ビッグデータ環境下において次世代コンピュータの果たす役割について検討した。さらに、会計およびファイネンスの領域への次世代コンピュータの適用について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
監査事務所および企業の経理担当者に対するヒアリングは、オンラインによりおおむね順調に実施できた。当初予定していた実験についても対面だけでなくオンラインによる実施方法も工夫している。ビッグデータが利用可能な環境における資産価格およびリスク推計については、一定の理論的検討を実施できた。また、大規模な最適値計算が可能なモデルについて、ファイナンス理論からの検証を実施することができた。ビッグデータ環境下において次世代コンピュータの果たす役割は大きいと期待されているが、次世代コンピュータは萌芽期にあるため、必ずしも使いやすいわけではない。本年度に重点的に研究したパラメータ調整方法は、今後、より優れた次世代コンピュータが登場した際に重要な技術である。
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今後の研究の推進方策 |
情報開示制度の研究領域では、監査法人へのヒアリングを継続するともに、これまでのヒアリング等で得た知見を基に、質問紙調査およびアーカイバルデータに基づく因子分析等を行う予定である。また、新たに実験やシミュレーションを計画しなおし、会計データの社会的な影響を検証する。ファイナンスの研究領域では、推定量の分散の解析解を利用して、ビッグデータ環境下において共分散やベータを推定するために実務的に望ましい研究デザインを構築する予定である。ビッグデータ解析の研究領域では、ビッグデータ環境下における次世代コンピュータの適用を可能にする方策を明らかにする。そのために、会計、監査、ファイナンスその他関連領域の課題抽出、課題の定式化を行う。それに加えて、次世代コンピュータの性能をより引き出すアルゴリズム構築を行う。
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