研究課題/領域番号 |
19H01555
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
麦倉 哲 岩手大学, 教育学部, 特命教授 (70200235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 戦争文化財 / 戦争災害 / 集団自決 / 処刑死 / 集団強制死 / 災害検証 / 災害伝承 |
研究実績の概要 |
本研究課題を遂行する一環として、2020年度中に、以下のような実績をあげた。自然災害といわれる地震津波による犠牲死と、戦災における犠牲死とを比較考察しつつ、検証や伝承という面から分析をする。戦争災害による犠牲死者や戦争体験者への聞き取り調査を進めるなかで、犠牲死の検証と犠牲死の記録をのこすことの意味や価値を掘り下げ、戦災の記憶を地域内外において継承・伝承し、文化財化するという課題を遂行するためである。 ①の論文は、沖縄戦において渡嘉敷村で戦争の犠牲となった死についてケーススタディをした。この論文では特に、日本兵によって処刑された朝鮮人軍夫(軍属)の死に着目し、戦争が激化するなかでの処刑がどのようになされたかを明らかにした。②の学会発表では、犠牲死者の第3の面に焦点を当てた。渡嘉敷村民ではなく、連合軍(米軍)によって強制移動させられた伊江村民の犠牲について検証したものである。 ①学術論文:麦倉哲「戦争の社会病理-日本軍によって処刑された朝鮮人軍夫-」(沖縄国際大学沖縄法政研究所『沖縄法政研究』 (23) 1-27頁 2021年3月5日)。②学会発表:麦倉哲「戦争の社会病理3 渡嘉敷島で処刑された6名の伊江村民」(日本社会病理学会第36回大会、神戸学院大学・オンライン、 2021年3月14日)。③論文や学会発表以外の活動実績として、渡嘉敷村や伊江村、沖縄国際大学、沖縄県内のシンクタンク、NPO関係者、郷友会関係者との連携を積み上げることができた。コロナ禍の影響で、フィールドワークが大きな影響を受けたが、研究費の一部を繰り延べることで遅れていた調査を実施することもでき、今後の学術成果へと結び付けていくことが状況にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、新型コロナウィルス感染症が急拡大し、本課題のフィールドワークの対象地も深刻な影響を受け、本年度中に現地調査を実施することが困難となった。調査対象地が沖縄で、対象層が主として高齢者であることから、現地調査を断念したのである。しかしながら他方で、前年度までに収集した調査データを整理し、文献・資料分析を進めるなどした。また、郵便や電話等での事実確認や情報交換を実施するなどで、調査・研究活動を進めた。従前の調査による収集してきた①インタビュー調査の音声記録や②関係自治体や関係者から提供を受けた資料はデータを整理し加工するという莫大な作業を要するものであった。分析しやすくする作業が必要であったからである。こうした作業の結果、学術論文の執筆に結びつけることができ(2021年2月)、また新たな学会発表へと結びつけることができた(2021年3月)。さらに、その後の現地調査における課題を精査する作業の時間にあてることができた。しかしながら、現地調査の遂行が困難であったために、現地調査の予算を2021年度に繰り延べる申請を行い、これが認められた。この予算を活用し、2021年度に現地調査を実施することができ、少し遅れていたフィールドワークを前に進めることができた。このように、2年目の研究は、大きな制約の中にありながらも、おおむね順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施してきた資料整理を継続しつつ、聴き取り調査のテキストデータ化、地図データ化を進める。また、写真データを整理し、関連文献・資料の目録化を進める。戦災被災死者や証言者の一人ひとりのライフヒストリー・ドキュメント化を進める。 今後とも引き続き、資料収集ならびに聴き取り調査を進める。 各種資料の分析を進め、講演や学会報告などの学術活動として発表する。各種資料の分析を進め、また洞察を深め、学術論文として執筆していく。 対象地域の戦争文化財としての社会的・文化的に資源化に尽くし、学術的な立場から幅広く社会に還元していく。 以上の課題遂行のために、研究協力者の方々と連携し成果のとりまとめを進めていく。
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