研究課題/領域番号 |
19H01557
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
町村 敬志 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任教授 (00173774)
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研究分担者 |
植田 剛史 愛知大学, 文学部, 准教授 (30709267)
山本 唯人 法政大学, 大原社会問題研究所, 准教授 (50414074)
丸山 真央 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80551374)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会学 / 超高層 / 都市 / 市民社会 / イベントスペース / COVID-19 / ガバナンス / 自粛 |
研究実績の概要 |
本研究は、1)経済成長期を通じてむしろ「超高層化をせずに済ませていた」東京がなぜ失われたのか、2)超高層化の進展は都市の内外にどのような影響を及ぼしたのか、3)超高層化問題に対処する実践がいかに展開してきたのかという「建造環境と人間・社会の連関」に関わる問いを、依然「建てずに済ませている」都市との国際比較も含め、社会学的視点から検討する。 2020年度においては、新型コロナウイルス問題が都市の建造環境とその利用に大きな影響を及ぼしている実態を踏まえ、同時進行する事態の動きを観察・記録・分析することにとくに注力するとともに、国内・海外での実態調査を実施できない状況に臨機応変に対応することとした。とくに新型コロナウイルス問題が都市・建造物に及ぼす影響のなかでも、人間活動と建造環境の接点にある諸イベントスペースの変化を軸に、調査分析をおこなった。 1)建築確認に関する基礎データと、今回作成をした東京都内における超高層建造物データベースを用いて、新型コロナウイルス問題直前の再開発や空間紛争の動向について分析を行った。2)東京都内におけるイベントスペースの最新リストを作成し、新型コロナウイルス問題に伴う緊急事態宣言とその前後における持続と「自粛」の実態について、研究協力者との協力で総括的なデータベースを作成した。3)新型コロナウイルス問題下におけるイベントスペース利用者側の対応について明らかにするために、1都3県に居住するイベントスペース利用者を対象とするウェブ調査を実施した(回答者は20歳代から60歳代の計1244名)。4)データベースおよび調査結果の分析を継続してきており、その成果を日本都市社会学会大会(2020年9月)と日本社会学会大会(2020年10月)において発表するとともに、一連の研究成果を日本語および英語により公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、当初の課題と作業を継続しつつ、2020年初頭に発生した新型コロナウイルス問題が都市の建造環境とその利用形態に多大な影響を及ぼしつつあることを踏まえて、研究課題を臨機応援に展開させる努力を重ねた。検討を踏まえ、海外都市との比較検討のための現地出張調査に代えて、パンデミックが高層建築物を含む建造環境の利用に対して及ぼす影響を東京において多角的に検討するという作業を進めることとした。研究組織を拡充した上で、新型コロナウイルスの感染拡大と同時進行の形で関連調査を実施することに注力し、多くの貴重なデータを集積することが可能となった。その結果、遅れを取り戻し、おおむね順調に研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、新型コロナウイルスにともなうパンデミックが、都市の建造環境と空間利用に対して及ぼしてきた影響について、蓄積された調査データをもとに分析をさらに深化させていく。また状況が許すようであれば、東京都内でのイベントスペース現地調査にも着手し、データの解釈を確実なものとしていく。 最終年度であることを踏まえ、超高層化ないし「高さ」というテーマが、突如発生した新しい事態のインパクトの下でどのように変容していくのか、という大きな課題について検討を行う。空間を利用する多様なアクター、利用の場を生産・提供・維持する多様なアクターは、難局のなかでどのような形でレジリエンスを発揮することができたのか。都市のガバナンスの維持という観点から考えた場合、どのような新しい課題が生まれつつあるのか。こうした問いを理論的に考察するため、新型コロナウイルス問題と都市に関わる最新の研究成果をフォローしつつ、研究分担者・研究協力者を交えた研究会を引き続き組織し、俯瞰的視点から本研究課題の達成点を明確にする作業を行い、成果を学会報告(日本都市社会学会大会を予定)、雑誌論文(『一橋社会科学』他)の形で公表していく。
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