研究課題/領域番号 |
19H01569
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
黒須 里美 麗澤大学, 国際学部, 教授 (20225296)
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研究分担者 |
津谷 典子 慶應義塾大学, 大学共通, 教授 (50217379)
川口 洋 帝塚山大学, 文学部, 教授 (80224749)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パネルデータ / ライフコース / 東北 / 災害 / 宗門人別改帳 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世日本の宗門人別改帳をベースとした多世代パネルデータを用い、庶民の家族・ライフコースと社会的・地理的移動の関係を探る。3つの目的それぞれの2019年度の成果は以下の通りである。 (A)多世代パネルデータベースを利用し、外的要因としての飢饉をどうモデルに組み込めるかという視点も含めて、東北地域データの活用を検討した。また、GISを利用した郡山と郡山周辺農村を起点とする18-19世紀の移動の変容の可視化を試みた。 (B)データベース拡充と質的資料の統合:①東北地域分析のためのサンプルを増やす目的で、羽前国(山形県)山家村と岩代国(福島県)南杉田村史料の続柄とイベントを中心とした分析用ファイル構築前のデータクリーニングを行った。②福島県への人口供給元である越後国(新潟県)の人口構造を理解するために、頸城郡・蒲原郡宗門改帳を利用した個人情報の連結や、約20ヶ村の入力を進めた。③東北日本の歴史資料から、人口、歴史地理、古気候それぞれの分野における天候・作況・人口情報の復元を検討した。 (C)歴史人口の比較研究:①イベントヒストリー分析による子どもの死亡確率を中心に、東アジア内での比較を試み、家族制度によるきょうだいの影響の類似性と相違性を明らかにした。②結婚を中心としたアジアとヨーロッパの文献調査を行い、その成果を英国Bloomsbury社のシリーズの一環として刊行した。③中欧特にドイツにおける近代移行期の死亡率データから、化石燃料社会への移行のタイミングが個々の地域の死亡率特に乳児死亡率の変化に影響していることが観察された。また領主支配が強く住民の移動や市場活動の自由が制限されている議論が通説であった中欧の東側の地域における新たな知見が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度末のコロナ蔓延によって予定していた南ボヘミアへの研究調査ができなくなり、また国際学会参加も中止を余儀なくされた。この予定予算分を2020年度に繰り越し、国際共同研究についてはオンラインでの打ち合わせ・共同作業で対応した。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的である以下の3つの項目について、昨年に引き続きデータ構築と分析、モデル構築、資料収集を行う。 (A) 家族・ライフコースと社会的・地理的移動分析: ①人別改帳をベースとした二本松藩(現在の福島県)の多世代パネルデータベースを用い、地域経済(米価)と世帯の社会経済的地位(持高)が同居家族を介して人口学的変数(特に死亡と移動)に与える影響について分析を進める。②東アジアとの比較研究を念頭に置きつつ、多世代における世帯動向や経済情報をどのようにモデルに組み込めるか検討する。 ③GISを利用した地理的情報を加えたモデルを開発し、郡山と郡山周辺農村を起点とする18-19世紀の移動の変容を可視化する。 (B) データベース拡充と質的資料の統合:①他地域との比較と、より詳細な分析を可能にするため、二本松藩以外の地域のデータ整備を行う。②二本松藩への人口供給元の村落構造を理解するために越後(現在の新潟県)の宗門帳からの人口情報の入力と整理を進め、基礎統計を算出する。 ③会津藩を中心とした福島県の歴史資料から、農業生産高、疫病、飢饉・災害、気象・天候情報などの質的・量的情報を整理し、人口学的変数とのつながりを探る。 (C)東ヨーロッパとの比較研究: ①昨年度に行えなかった南ボヘミア地域の移動情報について、現地調査を行い、その作成背景と資料の詳細を確認し、(A) ③データとの比較の可能性を探る。 研究成果は日本人口学会、Social Science History Association年次大会での報告発表を始め、人口・社会・環境・データベース関係の国内外研究雑誌への投稿を目指す。
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