研究課題/領域番号 |
19H01573
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
寺田 良一 明治大学, 文学部, 専任教授 (00163923)
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研究分担者 |
堀田 恭子 立正大学, 文学部, 教授 (20325674)
原口 弥生 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20375356)
野澤 淳史 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 学術研究員 (30758503)
平岡 義和 静岡大学, 人文社会科学部, 特任教授 (40181143)
堀畑 まなみ 桜美林大学, 総合科学系, 教授 (40348488)
藤川 賢 明治学院大学, 社会学部, 教授 (80308072)
湯浅 陽一 関東学院大学, 社会学部, 教授 (80382571)
宇田 和子 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90733551)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境社会学 / 環境リスク / 環境正義 / 環境運動 |
研究実績の概要 |
2019年度は、本研究プロジェクトの初年度であるので、環境リスクが個人的な認知を出発点としながらも、被害者や被害地域の偏り、社会階層的格差や地域格差との関連性などに関する社会問題化の機縁を、各研究分担者の研究テーマについて、社会的な公正規範や歴史的文化的背景などの文脈を勘案しながら、比較検討し、今後の研究計画の具体化を図った。 研究体制としては、隔月のペースで研究会を持ち、環境リスク論、環境正義論、とりわけ南北問題、マイノリティ問題などに関連した国際比較的観点からの論考を研究会で分担者から報告し、国際比較研究に向けた視点の深化を図った。具体的なテーマとしては、東日本大震災後の原発事故に伴う避難者のリスク回避の問題、とりわけ県外避難者における低認知状態、避難先での社会的孤立、帰還への意思決定をめぐる地元と避難地域の認識の差、食品公害被害者運動における、個人的、主観的な被害状況が社会的に共有された環境不公正の問題フレームへと昇華していく過程、アメリカ、ワシントン州の軍事核物質製造施設周辺住民の運動における情報公開をめぐる軍事施設が故の困難さなどについても報告された。これら個別の事例が、環境リスク論や環境正義理論研究の枠組みの中でどう位置づけられるのか、分析への適用可能性や有効性に関する議論を深めた。 年度後半には、これらの議論や仮説を国内の諸問題について予備的な検証を進めるべく、サンプル数500人のウエブ経由の意識調査を実施した。年度内には集計を終えたので、本格的な分析は新年度の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初年度としての2019年度は、環境リスクの問題構築と環境正義の理論的考察に向けた文献・理論研究を第一の目標とし、環境リスク認知と環境正義に関係するものを収集し、研究例会を頻繁に持って論点整理、定性的比較研究の対象となる環境問題争点や事例の選択、定量的意識調査の対象地域の絞り込みなどを、ほぼ順調に進めることができた。また、予備調査として、日本国内における、環境リスクと社会的公正規範等に関する意識調査をウエブ調査として実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 環境リスクの認知から社会問題化への問題フレーム構築過程とその阻害要因に関する、主として定性的な実証研究 研究代表者および分担者は、これまで、原発、核廃棄物処分問題、有害化学物質、産業公害、食品公害などをめぐる事例研究や、それらに関係する環境リスク認知の研究を進めてきた。国内のこれらの問題においては、背景に地域格差問題や認定・補償における制度的不備など、実質的に環境的不公正性が問題とされているものが多い。それらと、いくつかの海外の環境正義運動の事例、例えば、アメリカにおける人種問題を背景にした環境正義運動、アジア社会に見られる、経済格差等を背景としたそれや、少数民族、先住民との格差に基づいたそれらについての、定性的比較研究を進めていく。また個々の問題事例において、環境・健康リスクが個人的な回避ではなく、集合的、社会的な政策課題として問題フレームが形成されていく過程やそのレトリックの内容などを明確な分析目標として比較事例研究を行う。 2. グローバルに拡張された環境正義の3側面(配分的、手続き的、認知的)と、各国の環境問題、環境運動の状況、環境リスク認知のパターン、格差構造、社会的政治的信頼感などの国際比較研究 今年度に主に予定している各国の環境運動の定性的調査の結果を勘案しながら、2・3か国程度を選定し、今年度目後半から次年度目前半にかけて、定量的調査を行う。ここでは、原発、有害化学物質、産業公害、食品公害などに関する個々人のリスク認知が、どの程度、どのような意味で社会的公正性と関連づけられて認識されているか、リスク回避に向けての個人レベルの対処が不十分であるとすれば、どのような集合的な対処や制度的なリスク低減政策が必要だと考えられるかなどについての認識、各国の環境問題や環境運動が、どのような社会的経済的地域的格差、歴史的背景や政治文化的背景を問うていきたい。
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