研究課題/領域番号 |
19H01575
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊藤 守 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30232474)
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研究分担者 |
山本 敦久 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (00453605)
有元 健 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (30646378)
清水 諭 筑波大学, 体育系(副学長), 副学長 (40241799)
林 香里 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (40292784)
土橋 臣吾 法政大学, 社会学部, 准教授 (50350236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 福島 / 原発事故 / 世論 / オリンピック / ソーシャルメディア / 復興 |
研究実績の概要 |
2019年4月より研究会をスタートし、以下の研究を行った。4月に第1回研究会を開催、2019年度の研究計画について議論、6月に第2回研究会、OurPlanetTV代表の白石草氏を迎えて「福島の現状に関する包括的な報告」を受けて議論した。 7月21日に本研究会主宰の国際シンポジウム「祝祭資本主義とオリンピック」を開催した。約250名の国内外のオリンピック研究者と「反オリンピック」運動の各団体メンバーを交えて、報告者J.ボイコフ氏、山本敦久氏、いちむらみさこ氏、司会鵜飼哲による報告を基軸に議論を行った。オリンピック開催による、開催都市の財政悪化、監視の強化、ジェントリフィケーション、アスリートの意識変化など多様な論点が浮き彫りとなった。 第3回は9月には研究会のメンバー全員で福島の現地調査を行った。第1は「東京電力廃炉資料館」の視察、第2は双葉町の汚染土回収と仮貯蔵地区の視察、第3は富岡の復興住宅に住む複数の住民への聞き取り調査、第4は南相馬市の小高中学校長への聞き取り調査、第5に飯舘町居住の農業従事者への聞き取り調査を実施した。震災・原発事故から9年が経過したが、低所得者への支援が不十分であること、復興住宅などの新しい生活空間のコミュニティ形成が進んでいないこと、小中学の児童数が減少のままであること、「ハコモノ」の建設が進むものの農業や小規模事業者への支援が手薄であること等、「復興」という名の下での厳しい現実が明らかとなった。 この調査を踏まえて、第4回研究会では10月に福島の県立高校の教員、原発報道に長年携わってきたジャーナリストを迎えて、原発事故以降の福島の教育現場の状況、廃炉に向けた作業の進捗状況と課題について報告を受けて議論した。 2020年2月には第5回研究会で有元健氏による「2020東京オリンピック」のメディア表象に関する分析を基に議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実勢の概要」に記したように、国際シンポジウムと福島の現地調査を含む研究会を5回開始し、当初予定していた以上の活動と、次年度につながる研究成果を得ることができたと考えている。 オリンピック開催時である2020年に予定しているメディア報道と世論形成のプロセスの分析、ならびに福島居住の市民の「福島の現状とオリンピック開催に関する調査」に向けた準備の年としてて2019年度の研究計画を立てた。具体的には、福島の現状把握のためにこの問題に詳しい専門家からの聞き取り/講演、オリンピックが抱える諸問題に関する共通認識の形成であるが、その課題は研究会の開催を通して遂行できており。順調に研究が進展した。ただし、ソーシャルメディアによる情報の拡散と世論形成への意義をどのような方法で、いかなる視点から分析を行うのかに関する議論が不十分であり、今後、この領域に対するアプローチの方法を検討する必要があるとともに、マスメディア報道とソーシャルメディアとの関係についても理論的検討を行っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年のオリンピック開催を前提に研究計画を立てていたが、開催が21年に延期となり、大幅に計画を変更せざるを得ないこととなった。 そのため、今年度は、福島の「復興」の状況に関する調査に力点を置いて取り組むこととする。第1は、復興住宅などのコミュニティ形成にむけた課題を把握するために数度の聞き取り調査を行う、第2は、福島県立医大の研究者の協力も得ながら、福島在住の大学生に対するアンケート調査(福島の現状に関する認識、健康被害に関する認識、復興事業に関する評価、オリンピック開催に対する評価など)を行う、第3は、自主避難者に対する聞き取り調査(生活・経済の現状、帰還への意向等)を重点的に行う。 しかしながら、コロナウィルス感染の拡大と収束の時期が予測できない状況にあって、福島の現地調査が行えるかどうかも未定であり、今後の推移を見守りながら、研究を慎重に行っていく予定である。 さらに加えて、オリンピック開催が延期されたことによって、オリンピックそれ自体、東京開催に関する市民の意識も微妙に変化していることが予測される。そこで、この変化を明らかにするために、数量調査が可能かどうか(次年度に大規模調査を予定しており予算面で可能かどうかの検討が必要)の検討を行いつつ、前向きに対応することを考える。 いずれにしても大きな変更を余儀なくされており、コロナウィルス感染の拡大状況を見極めながら研究を遂行することになる。
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