研究課題/領域番号 |
19H01577
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加瀬 裕子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30296404)
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研究分担者 |
牧野 遼作 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (10780637)
菊池 英明 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70308261)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソーシャルワーク面談 / 認知症高齢者 / コミュニケーション / 音声データ分析 / 画像データ分析 |
研究実績の概要 |
【意義と目的】 介護職員の介護負担となる認知症の行動・心理症状を予防・緩和する方法の一つは、「認知症高齢者のコミュニケーションの促進」である。コミュニケーションによって、認知症を患う高齢者が脳への良い刺激を受けることは脳科学研究によって実証されている。特に、回想的話題が認知症高齢者のコミュニケーションを促進することが明らかだが、その際には、面談技術が問題となる。ソーシャルワーク面談は、MCOモデルにより人を支援する技術だが、その構成要素である技術や効果は測定されず、可視化されていない。本研究では、認知症高齢者に有効なソーシャルワーク面談の要素技術を抽出し、その要素技術と回想的会話を連携させたプロトコルを作成することを目的とする。 言語工学の成果である①発話単位認定②形態素解析③係り受け解析により、認知症高齢者の会話を評価し、動機・能力・機会のアセスメント状況、回想的話題、非言語コミュニケーションの測定を行い、認知症高齢者に有効なソーシャルワーク面談のプロトコルの作成を試みた。 【方法】認知症高齢者との面談に10年以上の経験のあるソーシャルワーカー2名を招き、認知症を患ってはいるが自立生活が可能なケアハウス入居者3名との面談を実施した。各30分程度の面談(6パターン)を録画および音声収録を行い、データ化を実施した。収集したデータは文字化および画像解析が進行中である。PerlmanのMCO(本人の動機・能力・機会をアセスメントする)モデルを援用し面談行動コード化システムを構築することを試みた。非言語的コミュニケーション分析については、音声科学において定評のあるソフトを使用し、声の高さや会話のスピードを分析するとともに、行動解析を行った。高齢者に聞きやすい音声、傾聴態度、語りを促す身体的動き質問方法などを分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年2月末に研究協力者のソーシャルワーカー10名に連絡をして、ソーシャルワーク面談をビデオ収録する準備ができたところで、実施する直前に新型コロナウイルスの蔓延により高齢者施設(ケアハウス)への立ち入り禁止措置が行われるようになった。そのため予定されていた実験場所の確保と研究参加を承諾してくれた高齢者に面会することが、不可能となり、6事例のみのデータ収集となった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス渦の鎮静以降、以下のとおり対処したい。①【実験参加者の確保】実験場を変更してデータを収集する。社会福祉協議会、社会福祉法人、NPO法人に依頼し、熟練した福祉援助相談員(ソーシャルワーカー)を20名確保する。また、老人福祉施設等に依頼し模擬面談対象者を募集する。②【模擬面談の分析】新しいデータの収集と名別に、申請者らが過去に収集した書き起こしテキストデータ(認知症高齢者10名と配偶者10名600時間分)の言語学的分析を行い、回想的会話が認知症高齢者のコミュニケーション促進に及ぼす影響の程度、および、その内容の分析を行う。
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