研究課題/領域番号 |
19H01587
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 教授 (10340043)
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研究分担者 |
竹原 幸太 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (30550876)
二井 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感化院 / 少年教護院 / 少年教護法 / コロニーシステム / 児童の権利思想 / 鑑別 / 児童保護員 |
研究実績の概要 |
本研究は、児童自立支援施設(旧・感化院、少年教護院)所蔵資料の分析により、その実践とそれを主導した理論・思想について、感化院長らが感化法改正・少年教護法制定を求めた1920年代後半から少年教護法の施行を経て総力戦体制への参加が求められた1940年代はじめまでの展開を明らかにすることを目的としている。その際、仮説的に、①家庭学校長留岡幸助が推進したコロニーシステムにもとづく実践、②兵庫県立土山学園長早崎春香や池田千年等精神医学的知見を導入した実践、③国立武蔵野学院によって目指された調査研究に基づく実践と院長菊池俊諦による「児童の権利」思想、という系譜で捉える。 初年度の本年度は、基礎的な資料調査・分析を実施した。第1に、東京都立萩原実務学校(児童自立支援施設)の所蔵資料調査を実施し、所蔵資料の全体像や状態の把握、資料のクリーニング、目録作成に着手した。第2に、少年教護法施行によって実施された少年教護委員として、関西特に大阪における少年教護の推進につとめた柳政一氏の関係者への聞き取り調査を行った。第3に、中央社会事業協会が刊行した『社会事業』誌(復刻版)等を購入し、社会事業論壇における感化院・少年教護の実践思想の分析に着手した。 ①コロニーシステムにもとづく系譜については、徳富蘇峰と南崎兼左衛門関係書簡、留岡幸助関係書簡の収集を行った。②精神医学的知見による鑑別を重視した系譜については、関西から対象をひろげて東京府における鑑別委員会の資料調査を行った。③「児童の権利」にもとづく実践思想の系譜については、菊池俊諦・田子一民・生江孝之に注目して戦前と戦後との言説を分析し、論文を公表した。 その他、少年教護委員実施以前に取り組まれた院外・地域での児童の保護に注目し、東京府における児童保護員制度(1919年~)についての資料調査と分析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の遂行にあたって、戦前・戦時下の感化院・少年教護院における実践思想を分析するための基礎作業として、児童自立支援施設における所蔵資料調査を2カ所において計画した。 そのうちの東京都立児童自立支援施設1カ所については、所蔵資料の全体像と状態を確認し、所蔵資料のクリーニング、目録作成に着手した。しかし、想定以上に多くの量の資料があり、さらに、2020年2月頃からの新型コロナウイルス感染拡大のため、さらには2020年度においても、2回目以降の調査が実施できず、目録作成は終了していない。また、予定していた資料撮影もできなかった。 他の1カ所については、2019年の東日本台風による施設の被害のため実施そのものが延期となり、その後、新型コロナウイルス感染拡大のため、所蔵資料調査は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、研究の進歩がやや遅れている児童自立支援施設所蔵資料調査については、実施にむけて調査協力先である児童自立支援施設との調整を続ける。ただし、児童自立支援施設は、児童が入所している施設であり、慎重な判断が求められることから調査の実施が困難となることも予想される。実際、新型コロナウイルス感染予防を必要とする状況は、2020年度においてはさらに広がった。そこで方策としては、まず児童自立支援施設貯蔵調査についてはその規模を縮小し、既刊の復刻版資料(中央社会事業協会による『社会事業』誌)などを購入し、また、すでに収集済みの資料の電子データ化・翻刻作業のための人件費を確保し、そこで得られた資料の分析をすすめていくこととする。また、児童入所施設での資料調査ではなく、公文書館などにおける資料調査で実施可能な研究を先にすすめることとする。
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