本研究の目的は、2010(平成22)年度以降の障害者施設をめぐるコンフリクト発生実態を、全国調査を実施することにより究明することである。障害者施設のなかでも、特に地域住民からのコンフリクトの確立が高いと考えられている精神障害者施設を取り上げ、施設コンフリクトの発生事由について、地域側の要因(社会文化的背景等)の関与を明らかにする。精神障害者施設コンフリクトに関する全国調査は、1980年代には国立精研、1990年代には毎日新聞によって実施されているが、2000年代以降は申請者の調査しかなされていない。本研究では、2010年に申請者が実施した2000年から2010年までの10年間における施設コンフリクトの実態調査結果との比較検証を行うことにより、直近10年間の動向について分析を行う。そして、信頼関係の醸成をゴールとするコンフリクト・マネジメント手法の可能性及び「仲介者」の属性や資質、期待される具体的な機能等について解明する。具体的には、以下の3点について明らかにすることを目的とし、研究を遂行した。 ①2010年以降から現在にいたるまでの精神障害者施設におけるコンフリクト発生状況について、その実態を明らかにした。その上で、過去の施設コンフリクト発生状況と近年の状況について、1980年代から現在に至るまでの調査結果を分析し、近年の施設コンフリクトの発生動向について明らかにした。 ②実態調査及び聞き取り調査の結果を基に、施設コンフリクト発生後に合意形成に至った事例を分析し、合意形成に至る手法・方法及び施設周辺地域の社会的要因を解明した。 ③障害者施設におけるコンフリクトの合意形成において、信頼関係の醸成をゴールとするコンフリクト・マネジメント手法の可能性を検証した。
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