EUとその加盟国における多様な社会的包摂政策の展開とシティズンシップに関する研究

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H01592
• 研究機関: 一般社団法人部落解放・人権研究所(調査・研究部)
• 研究代表者: 福原 宏幸 一般社団法人部落解放・人権研究所(調査・研究部), 企画・研究部, 非常勤研究員 (20202286)
• 研究分担者: 平野 寛弥 目白大学, 人間学部, 准教授 (20438112) ; 嵯峨 嘉子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (30340938) ; 土岐 智賀子 開志専門職大学, 事業創造学部, 講師 (30709291) ; 柳原 剛司 松山大学, 経済学部, 教授 (40633251) ; 廣瀬 真理子 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 客員研究員 (50289948) ; 中村 健吾 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70254373) ; 亀山 俊朗 中京大学, 現代社会学部, 教授 (70507425) ; 松原 仁美 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70736347) ; 嶋内 健 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (70748590) ; 太田 美帆 静岡大学, 農学部, 助教 (70755355)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 福祉レジーム / 社会的包摂 / シティズンシップ / アクティベーション / 最低所得保障 / コロナ・パンデミック / EU / 社会権

研究実績の概要

本研究は、「社会的ヨーロッパ」の再構築をめざすEUと欧州各国における社会的包摂政策とりわけアクティベーション政策に着目し、各国による多元的な福祉レジームのあり方について分析を行うものである。
なお、2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響により十分な研究が進められず研究期間を1年延長し、2022年度は研究チームの主要な研究分担者の大病のためさらに1年延長した。
2020年10月に刊行した共編著『岐路に立つ欧州福祉レジーム：EUは市民の新しい連帯を築けるか？』を踏まえて、2021年度からはコロナ・パンデミックに対するEUと欧州各国の対応とその後の復興戦略、および、それが欧州福祉レジームに与えた変化を研究した。その成果は、2023年12月に共編著『コロナ危機と欧州福祉レジームの転換』として取りまとめた。
ここではまず、コロナ・パンデミックの打撃を受けて、EUと各国は緊縮財政の推進を棚上げし、「連帯」による復興戦略を立てたが、これはEUの経済政策の大きな転換を意味することを論じた。次に、各国のコロナ・パンデミックへの対応を分析し、一時的失業や生活困窮などに対する支援と、パンデミック以降の各国の復興戦略を明らかにした。各研究者は、雇用、家族政策、最低所得保障、国家-市民間関係など、多様な視点で分析を試みた。
この研究を通して、欧州は3つの論点について問われていることがわかった。①パンデミックは、自由権と国家の生命保護義務との対立的関係と、獲得してきた社会的権利が新自由主義的政策により浸食されてきたことを浮き彫りにした点。②積極的労働市場政策よりも消極的労働市場政策（最低所得保障など）の重要性があらためて明らかになった点。③コロナ期に拡大された社会的権利はコロナ危機以降もそのまま継続されるのだろうかという点。EUと欧州各国は、これらをどう捉え、今後の政策に反映するのかが問われている。

現在までの達成度 (段落)

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 書評「『アカデミック・スキル』か、それとも『学問への態度』か？」 (2024)
  • 著者名/発表者名: 中村健吾
  • 雑誌名: 経済学雑誌 巻: 124(1)・(2) ページ: 31-34
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 『みんなのおうちづくり』のむずかしさと展望 (2023)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸
  • 雑誌名: 協同の発見 巻: 366 ページ: 77-79
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 『特集 地域共生社会づくりにおける隣保館の可能性』を組むにあたって (2023)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸
  • 雑誌名: 部落解放研究 巻: 291 ページ: 2-9
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 自治体隣保行政及び隣保事業についてのアンケート調査結果：その分析結果から見えてきたもの (2023)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸
  • 雑誌名: 部落解放研究 巻: 291 ページ: 30-90
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] フランス型伴走支援と包摂領域の展開 (2023)
  • 著者名/発表者名: 松原仁美
  • 雑誌名: 連合総研レポートDIO 巻: 36(5) ページ: 13-16
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 若者の移行期支援としての起業支援：EU・イタリアのNEET問題と起業支援の動向から (2023)
  • 著者名/発表者名: 土岐智賀子
  • 雑誌名: 日本開発工学会『開発工学』 巻: 43(1) ページ: 45-48
  • DOI: 10.11363/kaihatsukogaku.43.45
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 子ども支援から地域住民の居場所づくりへ (2022)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸
  • 雑誌名: 協同の発見 巻: 354 ページ: 87-90
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] フランスにおける社会的連帯経済の動向:SCOP（フランス労働者協同組合連合会）を中心に― (2022)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸
  • 雑誌名: 協同の発見 巻: 357 ページ: 120-130
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 自律と能動：社会政策におけるシティズンシップの変容 (2022)
  • 著者名/発表者名: 亀山俊朗
  • 雑誌名: 社会政策 巻: 14(1) ページ: 24-36
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 生活困窮者自立相談支援機関・支援員に対するアンケート調査（調査報告） (2022)
  • 著者名/発表者名: 嵯峨嘉子・仲野浩司郎
  • 雑誌名: 社會問題研究 巻: 71 ページ: 129-138
  • DOI: 10.24729/00017615
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 貧困・ジェンダー・公助：ジェンダー史学からの問いかけ (2022)
  • 著者名/発表者名: 嵯峨嘉子
  • 雑誌名: ジェンダー史学 巻: 18 ページ: 131-132
• [雑誌論文] 書評：中囿桐代著「シングルマザーの貧困はなぜ解消されないのか (2022)
  • 著者名/発表者名: 嵯峨嘉子
  • 雑誌名: 地域福祉研究 巻: 10 ページ: 175-176
• [雑誌論文] 協働の体験を通して変化する：静岡大学農学部「農業環境教育プロジェクト」の試み (2022)
  • 著者名/発表者名: 太田美帆
  • 雑誌名: 農業と経済 巻: 88(3) ページ: 143-152
• [雑誌論文] 福祉給付に付帯する「条件」の変容と強化 : イギリスの事例から (2022)
  • 著者名/発表者名: 平野寛弥
  • 雑誌名: 貧困研究 巻: 28 ページ: 4-13
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 地域の人を支え、自らの成長を促す『よい仕事』 (2021)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸
  • 雑誌名: 協同の発見 巻: 341 ページ: 60-62
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] シティズンシップとケイパビリティ・アプローチ (2021)
  • 著者名/発表者名: 亀山俊朗
  • 雑誌名: 社会学論集（中京大学社会学研究科） 巻: 20 ページ: 5-21
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 国家主導性の観点からみたハンガリーの社会政策 (2021)
  • 著者名/発表者名: 柳原剛司
  • 雑誌名: 松山大学論集 巻: 33(5) ページ: 25-55
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] ベルトラン・シュワルツの＜職業的・社会的参入＞の理念と実践 (2021)
  • 著者名/発表者名: 松原仁美
  • 雑誌名: 経済学雑誌 巻: 121(2) ページ: 65-82
  • オープンアクセス
• [学会発表] コロナ危機とウクライナ戦争にともなうEUの「転換」 ――強固な社会的次元をともなう財政連邦制は可能なのか？―― (2023)
  • 著者名/発表者名: 中村健吾
  • 学会等名: 社会政策学会
  • 招待講演
• [学会発表] オルバーン政権の家族政策 (2023)
  • 著者名/発表者名: 柳原剛司
  • 学会等名: ハンガリー学会
• [学会発表] ドイツにおける公的扶助改革とコロナ・パンデミック (2023)
  • 著者名/発表者名: 嵯峨嘉子
  • 学会等名: 社会政策学会第１４７回大会
• [学会発表] 若者の移行期支援としての起業支援：EU ・イタリアの NEET 問題と起業支援の動向から (2023)
  • 著者名/発表者名: 土岐智賀子
  • 学会等名: 日本開発工学会 第６回研究発表大会
• [学会発表] コロナ禍を経たイタリアの若者の移行期支援政策の動向 (2023)
  • 著者名/発表者名: 土岐智賀子
  • 学会等名: 社会政策学会第147 回大会
• [学会発表] コロナ危機下におけるデンマークの雇用・社会保障と非典型雇用 (2023)
  • 著者名/発表者名: 嶋内健
  • 学会等名: 社会政策学会第147回大会
• [学会発表] 欧州における社会的セーフティネットをめぐるいくつかの論点 (2022)
  • 著者名/発表者名: 廣瀬真理子
  • 学会等名: 日本学術会議法学委員会セーフティネットと法分科会
• [学会発表] シティズンシップと自律 (2022)
  • 著者名/発表者名: 亀山俊朗
  • 学会等名: 社会政策学会第１４５回大会
• [学会発表] 大会シンポジウム（貧困とジェンダー―「公助」の役割を問う）コメンテーター (2022)
  • 著者名/発表者名: 嵯峨嘉子
  • 学会等名: ジェンダー史学会
• [学会発表] フランスの若年者雇用問題から見る地域包括支援 (2022)
  • 著者名/発表者名: 松原仁美
  • 学会等名: 人口動態と就労環境研究会（静岡大学）
• [学会発表] 欧州経済危機以降フランス若者政策の制度改革と意義 (2022)
  • 著者名/発表者名: 松原仁美
  • 学会等名: 社会政策学会第144回大会
• [学会発表] フランス若者政策の制度改革 (2022)
  • 著者名/発表者名: 松原仁美
  • 学会等名: 就労支援研究会（大分大学)
• [学会発表] コーオプ型教育プログラムにおける実践と課題 (2022)
  • 著者名/発表者名: 土岐智賀子、松澤孝紀、東城歩、原岡和生
  • 学会等名: 京都大学第28回大学教育研究フォーラム
• [学会発表] イタリアの社会的企業：動向と課題 (2022)
  • 著者名/発表者名: 土岐智賀子
  • 学会等名: 日本開発工学会 第５回研究発表大会
• [学会発表] 主体と自律の「関係論的転回」とそれがもたらすもの (2022)
  • 著者名/発表者名: 平野寛弥
  • 学会等名: 社会政策学会第１４５回大会
• [学会発表] Agency Freedom and Autonomy in the Nudging Environment (2022)
  • 著者名/発表者名: 平野寛弥
  • 学会等名: THE HDCA (Human Development & Capabilities Association) CONFERENCE
  • 国際学会
• [学会発表] 能力開発・教育政策と＜自律＞＜能動＞ 「市民」に必要な能力とは何か(1) (2021)
  • 著者名/発表者名: 亀山俊朗
  • 学会等名: 日本社会学会第９４回大会
• [学会発表] 社会政策におけるシティズンシップの変容 (2021)
  • 著者名/発表者名: 亀山俊朗
  • 学会等名: 社会政策学会第１４３回大会
• [学会発表] フランス福祉国家の再編と若者政策 (2021)
  • 著者名/発表者名: 松原仁美
  • 学会等名: 就労支援研究会（大分大学)
• [学会発表] 持続可能な社会づくりとソーシャルイノベーション・社会的起業家：イタリアの事例より (2021)
  • 著者名/発表者名: 土岐智賀子
  • 学会等名: 日本開発工学会研究会
• [学会発表] 社会福祉の要件化の世界的潮流：イギリスの福祉制度改革の事例から (2021)
  • 著者名/発表者名: 平野寛弥
  • 学会等名: 貧困研究会第１４回研究大会
• [学会発表] 社会政策における自律とエージェンシー：「市民」に必要な能力とは何か（2） (2021)
  • 著者名/発表者名: 平野寛弥
  • 学会等名: 日本社会学会第94回大会
• [図書] コロナ危機と欧州福祉レジームの転換 (2023)
  • 著者名/発表者名: 福原宏幸・中村健吾・柳原剛司・嵯峨佳子・松原仁美・廣瀬真理子・嶋内健・土岐智賀子・太田美帆・平野寛也
  • 総ページ数: 285
  • 出版者: 昭和堂
  • ISBN: 978-4-8122-2301-7
• [図書] 福祉社会学文献ガイド (2023)
  • 著者名/発表者名: 亀山俊朗、平野寛弥、高野和良, 寺田貴美代 , 冨江直子, 森川美絵 , 米澤旦、他
  • 総ページ数: 388
  • 出版者: 学文社
  • ISBN: 978-4-762-03280-6
• [図書] 人生が輝くＳＤＧｓ (2022)
  • 著者名/発表者名: 嵯峨嘉子、井伊直比呂、伊藤嘉余子、乾 順子ほか
  • 総ページ数: 320
  • 出版者: せせらぎ出版
  • ISBN: 978-4-88416-285-6
• [図書] 地球を壊す暮らし方：帝国型生活様式と新たな搾取 (2021)
  • 著者名/発表者名: U.ブラント/M.ヴィッセン著、中村健吾/斎藤幸平監訳
  • 総ページ数: 258
  • 出版者: 岩波書店
  • ISBN: 978-4-00-061475-7
• [図書] 新・初めての社会保障論[第3版] (2021)
  • 著者名/発表者名: 廣瀬真理子,古橋エツ子、国京則幸、呉紅敏、田中明彦ほか
  • 総ページ数: 214
  • 出版者: 法律文化社
  • ISBN: 978-4-589-04173-9
• [図書] キーコンセプト 社会学 (2021)
  • 著者名/発表者名: ジョン・スコット編著、太田美帆、白石真生、栃澤健史、内海博文、他訳
  • 総ページ数: 376
  • 出版者: ミネルヴァ書房
  • ISBN: 978-4-623-08928-4