研究課題/領域番号 |
19H01598
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
辰巳 寛 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (70514058)
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研究分担者 |
山本 正彦 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (40378039)
長尾 確 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (70343209)
木村 航 白鳳短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (70782035)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 言語支援アプリケーション / 失語症 / 脳機能画像評価 |
研究実績の概要 |
慢性期脳卒中患者に対する言語支援アプリケーション(i-SAT)の臨床的有用性を検証するための基礎的研究を実施した。 対象は慢性期運動性失語症者2名。i-SATは、iPadProで起動し、画面には発話のモデル口型動画(発話速度調整可)と絵カード(意味的刺激)、文字刺激が同時に複数回反復提示され、患者の発話状況も同時録画する機能を有する。 方法:患者はアプリ内の自主訓練システムを使用し、毎回ランダムに提示される20単語/回の発語訓練(約20分)を8セット/日、8週間連続で実施。介入前後の評価はSLTA、SLTA-ST、RCPM、TMT-J、ROCFTを実施した。アプリの使用に関する負担や満足度に関する自記式アンケートを実施した。脳機能画像検証として、言語関連神経ネットワーク、注意関連神経ネットワークに関連する脳領域に関心領域を設定し解析を行い、リハビリ介入前後で機能的結合の変化を検証した。 結果:2名ともSLTA、SLTA-STの呼称(低頻度語)と注意機能の改善を認めた。アンケートではアプリに伴う心的負担や副作用はなかった。一方、アプリ訓練には高い満足度を示し、自由会話場面での発話量の増加や喚語困難が軽減したとの意見が得られた。画像評価においては、左島や左上側頭回など言語処理ネットワークに関係する脳領域、注意関連神経ネットワークでは背側注意ネットワークに関連する脳領域の機能的結合強化を確認した。 考察;慢性期失語症者2名に対し言語支援アプリによる短期集中訓練を実施し、呼称の改善と日常会話場面の質的変化、注意障害の改善を確認した。またi-SATは患者の訓練の自由度を保証し、高い満足度も得られることが示唆された。i-SATによる短期集中訓練は言語機能関連脳領域、注意機能関連脳領域の賦活化に肯定的影響を及ぼす可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発語障害者の自動診断システムの基礎プログラムは完成し、人工知能による機械学習のための教師的役割を担う健常者発話のデータもほぼ収集を完了した。臨床データの収集については、リハビリテーション実施時のマスク着用の義務にともない、患者の顔面全体の動画が記録しにくい状況だが、患者の同意を得た上で、感染防止策を徹底のうえ、安全かつ正確に動画データの収集を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに開発済みの発語練習用アプリケーションを機能拡張し、自動診断の機械学習用データの収集のための教師データ入力機能の追加に加えて、失語症者の発語動画データ(患者数:20名、単語数:総計2500語)と、その臨床評価(5名の言語聴覚士による聴覚的印象評価)のデータをもとに、顔特徴時系列データからの特徴抽出、および、評価値を予測する機械学習モデル(再帰型ニューラルネットワークモデル)の構築を試みる。さらに、パーキンソン病や運動障害性構音障害者の発話動画データを収集し、人工知能による発話自動診断システムの精度を検証する作業を予定している。今後は、タブレット上で、ユーザーの練習中の動画に対して音韻単位で評価値をアノテーションできるシステムの構築を予定している。
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