研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまでアカデミックな俎上にはのぼることのなかったミュラーの人物像を社会事業史のコンテキストで実証的に解明することであるが、2020年度は、ジョージ・ミュラーの来日した歴史的記録を日本側の当時の新聞記事等(基督新聞)より、その足跡を実証的に明らかにすることができた。また、文献解題の中心は、ミュラーに関しては、“Autobiography of George Muller”A Narrative of Some of the Lord's Dealings with George Muller”およびピアソンの詳細な伝記(Pierson,1899)を順調に日本語に全文を翻訳する作業ができた。 その成果として、「ジョージ・ミュラーの来日をめぐる日本のキリスト教界の反応と社会福祉史への影響」『キリスト教社会問題研究』69号を学術論文として公開することができた。 これまで、社会福祉学の研究史上において、未解明で、等閑視されてきたミュラーの実像の史実の発見であるばかりか、新しい社会事業史の解明につながり、研究結果においても学術的独自性が期待できる。またキリスト教社会福祉学においても、これまで、どちらかと言えば社会派の関連が福祉の直接的影響の中心として議論されてきたのに対して、ほとんど表舞台にあらわれることのなかった福音派や敬虔主義という内的信仰や神秘主思想が、逆説的に社会福祉の形成にもっとも強い影響の一端を担った可能性への探究は独創的かつ発展的であり、学術的創造性が期待できる。
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