本研究は、英国のジョージ・ミュラーの福祉思想が日本の社会事業形成へ与えた影響に関する総合的研究である。ミュラーという人物については、ブリストルの孤児院創設者、キリスト教伝道者、として知られているが、「偉人伝」的な扱いは別として社会福祉研究の中では、十分に検証されることなく学術的探究はほとんどなされていないのが現状である。 本研究では、1)これまでほとんど学術的に解明されることのなかったミュラーの人物像を実証的に解明する。その際、彼が強く影響を受けたドイツの敬虔主義思想を明らかにすること。また彼もその運動のリーダーであった英国のブラザレン運動を実証的に解明するが中心となる。そして、2)そのミュラーが日本に及ぼした影響について、山室軍平のミュラーの影響にかかわる実証的研究、そして石井十次のミュラー理解とそのプロセスを詳細に明らかにすることによってミュラーの福祉と日本近代の社会事業形成の影響の全体像を解明するというのが研究目的であった。 本年度は、2023年に『ジョージ・ミュラーとキリスト教社会福祉の源泉 ―「天助」の思想と日本への影響―』(教文館)を刊行することができたが、この研究成果に関してレヴューを受け、諸種の学術雑誌等に掲載された書評等に応答することができた。
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