研究課題/領域番号 |
19H01605
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中井 雄治 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (10321788)
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研究分担者 |
岡田 晋治 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50376563)
永長 一茂 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (70401891)
前多 隼人 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (80507731)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高リン食 / DNAマイクロアレイ / 脂質代謝 / リン恒常性 |
研究実績の概要 |
本研究では、高リン刺激が生体の脂質代謝に影響を及ぼす機構を解明することを目的として、高リン食投与ラットモデルを用いて主要な臓器における遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイで明らかにする。令和2年度は、高リン食単回投与(短期間投与)での遺伝子発現解析を行うべく令和元年度にサンプリングしたラット肝臓のDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、単回投与においても過去に行なった3週間投与(長期間投与)場合と同様に、肝臓で生成されて脂肪組織に働いて脂肪分解を促進するホルモンとしての作用が知られているfibroblast growth factor 21 (FGF21)を含む脂質代謝関連遺伝子が有意に発現変動することが明らかとなった。さらに、高リン食単回投与ラット肝臓における発現変動遺伝子を制御している上流因子を、Ingenuity Pathway Analysisソフトウェアによって推定した。その結果、上流因子としてperoxisome proliferator-activated receptor alpha (PPARα)やsignal transducer and activator of transcription 3 (STAT3)などが抽出された。FGF21自身も上流因子ネットワークに含まれていた。令和元年度に行なったラット高リン食単回投与実験時に同時にサンプリングしていた血液の生化学的な解析を進め、parathyroid hormone (PTH)等の血中リン濃度に素早く反応するといわれているリン恒常性調節に関わる因子の影響の有無を検討し、これらの遺伝子発現変動がPTH等の影響を受けた間接的なものであるか、リンが肝臓に直接作用した結果なのかを明らかにしていく予定である。さらに、脂肪組織や腎臓の遺伝子発現変動もDNAマイクロアレイで解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度、新型コロナウィルス感染症の流行を含む諸般の事情により、予定通り実験を進めることができなかったが、令和元年度中にサンプリングしていた動物実験サンプルのうちまず肝臓サンプルについては、令和2年度中にDNAマイクロアレイデータを取得することができ、発現変動遺伝子を制御する上流因子まで推定することができた。遅れを大幅に挽回するまでには至らなかったが、単年度のレベルでみれば概ね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずはすでにサンプリングしてある高リン食単回投与ラット血液の生化学的解析を行う。具体的には、リンやカルシウムなどのミネラル濃度、血糖値や中性脂肪など基礎的な生化学データの取得に加え、PTH・FGF23といったリン恒常性に関係する因子、insulin・FGF21といった糖代謝や脂質代謝に関わる因子をELISAによって測定する。また、すでにサンプリングしてある白色脂肪組織・腎臓サンプルのDNAマイクロアレイ解析を行う。 当初はレポータージーンアッセイでDNAマイクロアレイ解析から推定されたパスウェイの検証を行う予定であったが、実験系の構築に時間がかかるため、その前に培養細胞レベルで培地中のリン酸塩に対する応答が起こるかどうかを検証することとした。培養細胞を用いれば、PTHやFGF23などによる間接的な影響を排除することができるため、純粋にリン酸塩に対する応答を見ることができる。細胞としては、生物種は異なるが肝臓由来の培養細胞であるHepG2を用い、リン酸塩添加時のFGF21 mRNAの発現上昇が認められるかどうかをリアルタイムRT-PCRで検討する予定である。
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