研究課題
炭水化物は、タンパク質、脂質とともに3大栄養素の一つであり、我々が摂取するエネルギーの半分を占める。我々が摂取する炭水化物源の中心は澱粉であり、古代から人は様々な植物由来の澱粉を加熱などの調理を施すことで食してきた。現在の食品産業において、「おいしさ」と「健康志向」は最も重要なキーワードであり、今後は様々な澱粉の構造や特徴を熟知したうえで有効利用することが欠かせない。本研究の目的は、 (1)遺伝的背景が異なる米(変異体米)および(2)調理および物理的処理を与えた澱粉構造および澱粉物性を詳細に調べ、(1)と(2)の関係を明確にすることである。また、本研究で得られたデータと既存データをカタログ化し、「遺伝子」、「澱粉構造」、「澱粉物性」および「利用特性」の一連の流れのそれぞれの関係をつなげることで、澱粉の新学問領域「スターチミクス」を確立することである。2019年度は、本研究の中心となる未分解澱粉のゲルろ過カラムの立ち上げを中心に行った。最も大きな分子量が検出されるピークの出方が未だに不安定である場合もあるが、サンプルループを5mLにして希釈なサンプルを供試することで、野生型澱粉は3つのピークが現れることが分かった。また、サンプル調製の段階で物理的な振動を与えると、分子量が低分子量化することも明らかになった。それぞれのピークを分取し、ヨウ素染色、枝切り後に鎖長分布解析することで、各画分の構造を明らかにしつつある。鹿児島大学に訪問し、最も大きい分子量のピークの分子数を知るための実験系を思案している。
2: おおむね順調に進展している
本研究の中心となる未分解澱粉のゲルろ過クロマトグラフィーの方法の確立を試み、各フラクションの分析も進め、2020年度に行う実験内容も思案している。また、推進会議を6月に行い、研究代表者が個別に分担者を訪問し、研究打ち合わせを行った。以上のことから、研究は概ね順調に進展しているといえる。
今後は、ゲルろ過によって分離された各画分の詳細構造を明らかにする。7月に研究分担者と代表者で打ち合わせを行う。具体的な研究内容は、引き続き、遺伝的背景が異なる材料の準備を秋田県大が中心になって行う。必要な材料を圃場に植え、栽培し、収穫するとともに、各分析項目に必要な種子量を整理する。また、引き続き、本研究で中心となる分析手法である未分解澱粉の構造解析手法を秋田県大と鹿児島大学で連携して確立する。さらに、山形大学を中心に物理的処理を加えた際の澱粉構造解析を行うために、そのサンプルを作出し、秋田県立大学に提供する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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