研究課題/領域番号 |
19H01612
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
大澤 清二 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 特別研究員 (50114046)
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研究分担者 |
下田 敦子 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 准教授 (60322434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 身体技術の発達過程 / 人類史 / グロスモータースキル / ファインモーター / スキルリビングスキ |
研究実績の概要 |
★令和2年度は全世界を覆う新型コロナの猖獗のため、現地調査オペレーションを変更せざるを得なくなり、現地(タイ、ミャンマー、ネパール)と協議して代替的方策を講じることで調査を実現した。●タイでは、現地チェンマイ地区を拠点として周辺諸民族のうち狩猟採集民ムラブリ人の調査に重点をおき、綿密な聞き取り調査を数度にわたって行う計画とした。従来ムラブリ人の子どもの発育、発達と生育環境に関する周辺情報は殆ど得られていなかった。そこで現地調査協力者の支援により10年以上現地でムラブリ人と生活圏を共有している方の協力も得て、甲状腺腫と水の関係、木を切る習慣の欠如、競争しない社会、ムラブリの非攻撃性、自殺行為の欠如、衣服への欲求、化粧や装飾性の欠如、母親の授乳習慣、匍匐運動発達、基本的生活習慣の発達、性差としつけ、結婚年齢、多胎の問題、しつけ、玩具への嗜好、家事の手伝い、その他多岐にわたる新知見を得た。これらの成果については次年度に報告する準備を進めている。●ミャンマーでは、タイと同様に国内の移動が禁じられていたために、研究協力者とは頻繁にオンライン上で研究打ち合わせを行った。現地の協力大学は学長以下教職員が極めて協力的で効率のよい研究体制が確保されている。同大学には82民族、1600名の学生が在学し、各民族の情報を収集できる状態となっている。この人的ネットワークによって発育発達データを順調に収集し、データベース化しており、性別、民族別、年齢別の基礎統計量を把握した。●ネパールでも、現地調査が制限されていたので現地協力者がヒマラヤ地域のシェルパ、ボーティアなどについても身体技術の発達に関するデータ収集を行った。●これらのデータを用いてGoldschmidtの人類史発展段階モデルに沿って文明化によって変容する身体技術に関する記述と考察を引き続き行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、研究は非常に広範囲の地域と民族に及んでおり、新型コロナの流行のため計画を若干変更した。しかし幸いタイ、ミャンマー、ネパールにおいて研究を支援していただいている大学などの協力によって、概ね予定に沿って進展している。
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今後の研究の推進方策 |
★令和3年度も引き続き新型コロナパンデミックの影響は残ると予測される。●しかし、今年度の中頃よりはタイに於いては現地調査、打ち合わせを実施しうるとして計画を立案する。国内移動は4月時点でも可能である。現地ナーンにおいて、補充調査を行い、これまでに収集された情報を確認するとともに、映像記録をとることとする。また、現地において協力者たち、現地研究者を交えて研究報告会を行う。ムラブリに関する記録を日本語、英語にて論文、報告書、刊行物としてまとめる。●ミャンマーにては、政情不安定のために現地調査は現段階では困難であるが、後期には可能性は残っている。従って渡航計画を後期に暫定的に立案する。現地協力者たちと協働して安全性の高い地方都市、農村部において本研究に関する研究会を開催する。特に、諸民族の形態発育と運動機能の現状を報告し、これを成果物として現地の政府、大学、研究機関等に報告する。このために諸民族に関するこれまでに集積した子ども13000人、青年4000人のデータを用いて発育発達に関する各民族の現状を統計的に記述して報告する。これらの成果を英文で公表する。●ネパールにおいてもワクチン接種が進み年度中には現地における研究打ち合わせと報告会を開催できよう。今年度は現地協力者が収集したヒマラヤ地域の山岳民族の身体発育、発達データの解析を進め、学会発表(3月)を予定している。●これまでに収集したムラブリ、サロンという狩猟採集民から現代の都市社会に生育する子どものデータを用いてGoldschmidtの人類史発展段階モデルに沿って文明化によって変容する身体に関する論考をまとめる。以上の計画で、もし現地渡航が不可能の際は、オンラインにて代替的に研究打ち合わせを実施して計画を滞らせないようにする。
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