研究課題/領域番号 |
19H01615
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
飯島 陽子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (90415456)
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研究分担者 |
早川 文代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, ユニット長 (00282905)
及川 彰 山形大学, 農学部, 准教授 (50442934)
佐藤 大 公益財団法人かずさDNA研究所, ゲノム情報解析施設, 特任研究員 (30454052)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フレーバー / 和食 / 味噌 / メタボロミクス |
研究実績の概要 |
和食は風味が複雑であるがゆえに、そのおいしさの表現には、漠然とした、抽象的な表現がされることが多い。本研究では、風味の複雑性をあえて前提とした、これまでにない網羅性および精度の高い成分分析と官能評価を統合したフレーバーオミクス解析によって和食の風味を分子レベルで調べ、そのおいしさの定義を明確にする。和食のおいしさの包括的理解のため、日本の伝統調味料である味噌に着目し、網羅的成分分析と官能評価の統合解析によるフレーバーオミクス解析を行う。2019年度は、味噌の風味変化に影響が大きい「熟成過程」の違いによる味噌を調製、比較し、成分組成変化について、不揮発性成分はCE-MS(キャピラリー電気泳動質量分析計)およびLC-MS(液体クロマトグラフィ質量分析計)によって、揮発性成分についてはGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析計)によって網羅的分析を行い、味噌に含まれる成分カタログの作成を行った。さらに、熟成過程で変化した成分についてフィルターした。その結果、熟成によって増加する成分群、減少する成分群が分類された。不揮発性成分では、オリゴ糖類、イソフラボン類の変動がみられた。香気成分については、既知の増加がみられる成分以外に未知の香気成分の増加および減少がみられた。また官能評価については、定量的記述型官能評価(QDA)を行うため、味噌の風味の言葉だし、およびパネルの訓練を行った。本サンプルの官能評価については、次年度にこれらのサンプルについて本試験を行う予定であり、その結果をもとに成分組成と官能評価データの統合解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大豆と食塩、麹以外の添加物を含まない味噌を仕込み後 0 日~77 日まで経時的にサンプリングを行った。また、長期熟成味噌も比較対象にして解析に用いた。各味噌の水溶性画分およびメタノール画分についてメタボローム分析による網羅的解析を行った。その結果、仕込み直後の味噌と熟成77日後の味噌では麹由来の水溶性成分が多く含まれており、クロマトグラムの組成が大きく異なることがわかった。また、主成分分析結果では、多くの水溶性成分が熟成に従って経時的に増加することがわかった。特にGlutamic acidを始めとするアミノ酸類、糖類の増加が大きく、味噌の熟成に従い麹菌によるたんぱく質・オリゴ糖の分解が進むと考えられた。香気性成分については、SA-SBSE(solvent-assisted stir bar solid extraction)法で抽出を行った。香気成分データについて主成分分析を行った結果、熟成が進むにつれて、香気成分組成が大きく変化していた。ローディングプロットにより、熟成によって減少する成分よりも増加する成分の方が多いことがわかった。特にisoamyl acetateなどのエステル類が増加していたことから、耐塩性酵母などの微生物の作用によりアセチル化が進んでいると考えられた。また、味噌の特徴香気成分と知られる2-ethyl-4-hydroxy-5-methyl-3(2H)-furanoneやmethionolなどが熟成が進むにつれて増加していた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、味噌の熟成過程を軸に、味噌に含まれる不揮発性成分、揮発性成分についてカタログの作成ができた。今後、これらのサンプルについてQDAによる官能評価を行い、官能評価データとの紐づけを行う。また、多種の市販のみそを用いて、同様に解析を行い、どのような成分がマーカー成分になるのか、風味の特徴と含有成分の相関を調べ、多変量解析、ネットワーク解析などを活用し、成分による風味予測が可能であるかどうか検証していく。
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