研究実績の概要 |
令和元年度は,高齢者や障害者の身体機能の低下を支援する「ユニバーサル仕様」の衣服設計について,下記の各観点から研究を進めた. A.温熱的アプローチ:年齢による温熱感覚を把握するために,若・中年齢女性について身体各部位における温度感受性について温冷覚計を用いて測定・解析を行った結果,下肢の温度感受性に年齢差が認められた.また,脊髄損傷者における暑熱負荷時の体温調節および血液循環反応について,水循環服の水温を調節することで測定を行った.一方、高齢者の暑熱感受性の鈍さが熱中症を引き起こす原因になる場合がある.そこで,安価で簡便な方策として冷却ベストを開発し,32℃の環境下でその効果を確認した.さらに,パラスポーツの一つであるゴールボール競技の腰プロテクター付きパンツについて,温熱的観点から適切な素材を検討した. B.圧的アプローチ:つまずきによる転倒が原因で寝たきりになる高齢者が多く,つまずきを未然に防ぐことは健康寿命を延伸する上において非常に重要であることから,三次元動作解析,重心動揺,姿勢保持の観点から検討し,具体的な靴下設計のための設計指針を導出した.また,むくみ軽減靴下や体脂肪を効率よく燃焼させるランニングパンツを作製し,着用実験にてその効果を検証した.さらに,前述したゴールボール競技における腰プロテクターについて,圧衝撃性の観点からも検討を行った.一方,アクティブシニアのための筋疲労軽減タイプコンプレッション型ランニングパンツの設計を目的として,筋電図・心電図の測定から現流通品の課題点を明らかにした. C.触的アプローチ:褥瘡は,人体に加わる圧力分布と強度・持続時間,殿部の皮膚状態,座面の湿度が重要な要因である.パラスポーツの一つであるシッティングバレーボール(SV)の車椅子座面素材を検討するために,SV競技者に対してアンケート調査を行い,座面素材の接触圧や蒸れの程度を測定した.
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