研究課題/領域番号 |
19H01617
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
藤原 智子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (60310744)
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研究分担者 |
吉川 弘明 金沢大学, 保健管理センター, 教授 (10272981)
三枝 理博 金沢大学, 医学系, 教授 (20296552)
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
大黒 多希子 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (30767249)
安藤 仁 金沢大学, 医学系, 教授 (50382875)
小野 政徳 金沢大学, 附属病院, 講師 (70348712)
山本 祐二 滋賀大学, 保健管理センター, 教授 (80534338)
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90198119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 概日時計 / 生殖機能 / 食育 / 月経痛 / 摂食リズム |
研究実績の概要 |
これまで月経痛と食習慣の関係は十分に検討されてこなかったが、月経痛は器質的婦人科疾患の兆候でもあり、女子学生の月経痛は医学的に極めて重要な情報である。本研究代表者によるこれまでの検討で朝食欠食に月経痛が伴う可能性が示されてきた。そこで本研究では「生殖機能成長期に概日リズムの乱れが誘発する生殖機能障害は時計遺伝子に記憶され将来にも悪影響を及ぼす」可能性と「食事と光リズムの不整合性はダイエットによる生殖機能への弊害を増悪させる」可能性の二つの作業仮説を掲げ、食生活調査やラット実験による検証、および時計遺伝子改変マウスを用いたメカニズムの検討を行い、摂食と光リズムの非同期が誘発する若年女性の生殖機能障害機構を総合的に解析することを計画した。 その結果、金沢大学と滋賀大学の女子学生を対象に健康調査を用いた大規模アンケートによる検討で、朝食欠食に月経痛が伴うことが確認された。また8週齢の正常雌ラットを用いた検討で明期(ラット非活動期)のみに食餌給与を制限した場合に排卵数の抑制と性周期の障害が観察され、食餌時間のタイミングが生殖機能に影響することが明らかにされた。さらに食餌量の制限(20-50%カット)を2-4週間施行した条件下で明期と暗期に食餌給与時間を制限した負荷試験を行ったところ、食餌時間のタイミングにより食餌摂取量と体重増加が大きく変化することも示され、制限解除後の回復過程においても食事のタイミングの影響が続くことが示された。一方で子宮特異的時計遺伝子欠損マウスを用いて検討したところ、子宮に妊娠は成立するものの、出産に至らないことが観察され、子宮機能に時計遺伝子が深く関与していることが新たに示された。女子大学生の食生活実態の調査においては、一日の摂取カロリーが食事摂取基準を下回っているサンプルが多く、とくに朝食欠食時にそれを補う量を摂取することはほとんどない傾向が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の計画において、野生型の雌ラットおよび遺伝子改変マウスを用いた動物実験は概ね順調に遂行され、またアンケートによる調査も予定通りすすんだ。 ボランティア学生を対象とした食生活の実態調査の開始は、京都ノートルダム女子大学研究倫理審査委員会での承認後、新型コロナウイルス感染拡大に伴う学生の登学規制の影響により予定より少し遅れたものの、安全を確認しながら実施することができた。しかしながら、まだ目標とする被験者数には至っておらず、今後も引き続き安全な管理下での施行を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験では、野生型ラットによる検討においてこれまでの他の研究者の結果と比較するために雄ラットを用いた追加実験を計画することとした。また明・暗期の食餌時間・食事量の制限を負荷した状態と制限解除後の回復過程について、肝臓と生殖臓器の時計遺伝子発現変化を観察し、「生殖機能成長期に概日リズムの乱れが誘発する生殖機能障害は時計遺伝子に記憶される。」可能性を検討する。子宮特異的時計遺伝子欠損マウスにおいては子宮内膜と子宮筋層にわけての機能解析を追加検討する。 ボランティア学生を対象とした食生活の実態調査は、学生の安全を十分に考慮した上で、引き続き実施し、上記の実験から得られた知見と、個々の学生について観察された問題点を吟味し、朝食摂取を含めた規則的な摂食リズムを課した食生活改善プログラムを作成する。
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