研究分担者(今野)は、新教育基本法の第5条1項および第16条1項の注釈を担当するものとされ、それぞれについて草稿を作成し、研究組織内での数次の検討を経て、徐々に内容の錬磨を図り、本年度内に脱稿した。その後、研究分担者の研究成果を含んだ書籍が、令和3年10月に刊行されるに至った。研究分担者(安原)「自主性擁護的教育法と見えざる支払い-補助教材の教育の自由への影響-」では、教育基本法16条の不当な支配、14条の党派的教育の禁止を念頭に、教師の教育の自由に対する補助教材の影響を考察した。教育委員会による補助教材の選定・作成・配布が、教師の教育の自由にどのような影響を与えているかを検討し、教師の専門性と責任に基づく補助教材使用のあり方を展望した。 『コンメンタール教育基本法』では、第14条2項の党派教育の禁止を担当し、当該条文の趣旨、解釈、運用をまとめた。 現行の教育基本法の現代立憲主義に基づく逐条解釈のあり方を探求することを主目的とした本研究課題のうち、分担研究者の高橋哲(埼玉大学)においては、学校教員の身分保障、待遇の適正に関する法制度と社会教育の条件整備に関する法制度に関する研究を遂行した。また、前年度に続き、教員の多忙化をめぐる法制度、判例、政策に関する検討を行い、特にさいたま地裁にて展開されてきた教員超勤訴訟に関する判例分析をおこなってきた。これらの成果の一部については、『コンメンタール新教育基本法』(学陽書房)等に集録し、当初の予定通り刊行物として発表することができた。本年度においては、現行の教育基本法の現代立憲主義に基づく逐条解釈のあり方を探求することを主たる目的にした本研究課題のうち、分担研究者である中川律(埼玉大学)は、特に、教育条件整備法制と教育財政法制に関わる教育法制の分析及び関連する教育基本法の条項の解釈に関する考察を進めた。結果として、現行の教育基本法の逐条コンメンタールを書籍として出版することに関与し、具体的には、同法5条3項と16条4項の解説を同書に収録し、発表することができた。
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