研究課題/領域番号 |
19H01625
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70222411)
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研究分担者 |
犬塚 典子 田園調布学園大学, 子ども未来学部, 教授 (70400471)
池田 雅則 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (60609783)
種村 文孝 京都大学, 医学研究科, 助教 (80806711)
池田 法子 足利短期大学, その他部局等, 助教 (90827205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キャリアヒストリー / 医療専門職 / ジェンダー / 生涯キャリア / キャリアヒストリー理論 / 医学/医療者教育 / 専門職教育 / キャリアデザイン |
研究実績の概要 |
2020年度の本研究(「女性医療専門職におけるキャリアヒストリー理論の実践的構築及び適用に関する研究」)では、研究法・実践法を併せもつ「キャリアヒストリー法」(2016-18年度基盤Bで提起)の方法論的な精緻化・汎用化に向け、対面の実践活動と国内外の対面調査活動を予定したが、新型コロナの拡大で対面活動や海外渡航が叶わず、研究活動全般の軌道修正を余儀なくされた。このため、研究計画の変更と新たな発展方向性に向け、12回に及ぶ定例研究会をオンライン実施した。結果として研究発表や論文などの研究業績は少ないが、次年度の本格的活動への基盤づくりと準備体制を整えることができた。コロナ禍で、多くの医療従事者が目前の医療活動に追われ疲弊しがちな現在、医療専門職としての自らの働き方を中長期的な視野で捉え直し、今後を見通す手がかりを得るため、キャリアヒストリー法の貢献可能性は増している。 ≪主な実績≫(1)オンライン定例研究会開催 計12回(5/27、6/19、8/3、9/16、10/16、11/27、12/11、1/27、2/3、3/23.3/10 3/30)(2)【暫定版Ⅱ】の【オンライン版】への改編・オンライン版マニュアルの作成、(3)オンライン実践方法の検討(オンラインセッション試行1/19)、(4)医師・看護師向けオンラインワークショップの方法論的検討と企画構想(2021年6月看護協会研修会、7月日本医学教育学会ワークショップ、8月一般病院を予定)、(5)『看護研究』誌への投稿原稿の共同執筆、(6)倫理審査委員会の申請(12月承認、新潟大学)、(7)キャリアヒストリー理論構築への議論、(8)今後の研究に重要な人的ネットワークの形成と意見交換(キャリアヒストリーに関心をもつ医師・看護師・医療出版関係者)、(9)男性看護師の研究動向の整理と共有(研究協力者柏木睦月氏)(10)出版計画への議論
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、新型コロナの蔓延により対面での研究活動が不可能になり、軌道修正を余儀なくされた。このための議論や打ち合わせに多くの時間を要したのは事実であり、その意味では、少し遠回りをした感がある。とはいえ、結果的に、上掲(1)~(10)の実績に示したように、本研究で取り組むべき研究課題への(感染症拡大の現状を踏まえた)より円滑かつ効果的な達成に向け、次年度の研究活動の着実な準備体制が整い、さらに新たな発展可能性を見出すことができたことも、予想外の好ましい発展であった。 敢えて言えば、キャリアヒストリー理論の「理論構築」そのものに向けての議論が十分に行えなかった点が反省点と言えるかもしれない。だが、キャリアヒストリー理論とは、実践から切り離された「純化された」理論ではない。むしろ、研究法と実践法で構成されるキャリアヒストリー法の「実践のために/実践に向けて/実践を踏まえて」構築されるべきものと位置づけている。それゆえに、キャリアヒストリー理論の「理論」に特化した研究協議は、次年度に実践的取り組みを重ねながら、実践との往還の中で取り組んでいきたいと考えている。 コロナ禍は、医師や看護師など多くの医療従事者を日々、より切実な医療現場に立ち会わせることとなり、その現状が医療専門職の中に、中長期的視野で自らの生涯キャリアを振り返ることへの潜在的ニーズを生み出している。多くの関係者との意見交換から、このようなキャリアヒストリー法の現代的意義を確認・共有できたことにより、本研究は、予定外の方向性ながら、大きく進展したとみなされる。
以上により、「(2)おおむね順調に進展している」と回答した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進施策としては、定例研究会の毎月開催による研究協議や論点のさらなる掘り下げ、準備活動などを基盤に、Ⅰキャリアヒストリー実践に関わる研究活動、およびⅡキャリアヒストリー理論の構築に関わる研究活動に、研究代表者・研究分担者・研究協力者が共同で、あるいは分担することによって取り組む予定である。 Ⅰのキャリアヒストリー実践に関わる研究活動には主に、a.【オンライン版】とオンライン版マニュアルを活用し、オンラインセッションの実践方法を定式化する(接続・運営方法をも含む)こと、b.周到な準備と参画の下で、2021年6月の対面による看護協会研修会、7月の日本医学教育学会会員向けのオンラインワークショップ、8月の一般病院オンライン研修会を実施すること、c.その結果を振り返り、【対面版】および【オンライン版】のワークショップの実践方法を定式化する(接続・運営方法をも含む)こと、が含まれる。 Ⅱのキャリアヒストリー理論の構築に関わる研究活動には主に、d.『看護研究』誌に完成原稿を掲載するとともに、他の医療系雑誌にも研究成果の投稿を行うこと、e.実践の振り返りとこれまでの研究を往還しながら、キャリアヒストリー理論の構築と精緻化に向けた研究協議を行い、成果をまとめること、f.以上をもとに、医師・看護師の双方を対象とする書籍の刊行に向けた編集・執筆作業を行うこと、などが含まれる。 現時点では、医師より看護師のキャリアへの研修・出版ニーズが相対的に明解なため、全般的には、看護師対象の取り組みがやや先行することが予想される。他方、医師については今年度末に、女性医師支援にも携わる河内泉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科医学教育センター准教授)を研究協力者に迎えた。また2021年7月末に日本医学教育学会研究大会でキャリアヒストリー・ワークショップ(オンライン)を実施するなど、対象に応じた取り組みを行う。
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