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2022 年度 実績報告書

授業研究における国際交流のためのエビデンス創出と解釈共同体の形成に関する開発研究

研究課題

研究課題/領域番号 19H01634
研究機関東海学園大学

研究代表者

的場 正美  東海学園大学, 教育学部, 教授 (40142286)

研究分担者 久野 弘幸  中京大学, 教養教育研究院, 教授 (30325302)
田上 哲  九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50236717)
大野 栄三  北海道大学, 教育学研究院, 教授 (60271615)
杉本 憲子  茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (70344827)
吉田 成章  広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (70514313)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード授業研究 / 解釈共同体 / エビデンス / 授業分析 / 事実の可視化 / 文化依存 / 思考体制 / 説明項
研究実績の概要

本研究は、調査や学問的根拠を有する諸事実や学校など自他の共同体が生み出した諸事実が、解釈共同体の媒介を経て、どのようにエビデンスとなるかを解明する実証的かつ開発的研究である。文化に依存した授業研究によって生み出された諸事実は、それを生み出した ①学校や団体の文化的影響、②実施・活用・参加する個人の表象や構え、③成員が属する解釈共同体の影響を受けている。
2022年度の研究は、各研究サークルや学校が、①同僚との協働的な教材研究と②解釈共同体としてのそれぞれの研究会における交流を通して、③どのようにエビデンスを創出し、④どのような表現方法で検証・評価し、⑤解釈共同体をどのように持続的に形成するのか、その様相を解明することを中心とした。
コロナ禍では、多くの研究サークルは、オンラインで研究交流を行った。理科サークルの事例では、問題解決の議論全体がもつ推論構造をIBE(認識論の「最良の説明への推論」)として把握し、その枠組みの中に、説明項となる実験結果を提示する過程、科学的説明を試みる過程、証言に関わる過程などがいくつも埋め込まれていた(大野 2022)。解釈共同体の一つである「社会科の初志をつらぬく会」の場合、子どもの発言や教師の観察記録など諸事実を関連的統一的に把握する各解釈者=実践者の思考の根拠として、<思考体制>が背後にあり、その変革が教師の成長と共同体の継続に関係する。解釈共同体の持続的形成には、授業研究における討論の場が重要な役割を持ち、その場は、参加者の論理がひびき合うコトバを選択する場、揺らぐ場、分節された事実に新しい気づきをする場である(的場 2022)。
エビデンスとしての事実の可視化は、個の学びを測定し、他の個の学びと比較がなされるという限界性がある(田上 2022)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究は、各研究サークルや学校が、①同僚との協働的な教材研究と②解釈共同体としてのそれぞれの研究会における交流を通して、③どのようにエビデンスを創出し、④どのような表現方法で検証・評価し、⑤解釈共同体を持続的に形成するするか、その様相を解明することであった。
理由1)コロナ禍が大きな理由で、日本及び諸外国における授業研究を展開している諸研究サークルへ直接的参与し、調査することができなかった。そのために、アメリカ、北欧、西欧、アジアの授業研究サークルの授業研究の段階、サイクル、類型を区分するための具体的な展開過程の基礎資料を収集できなかった。そのために、授業研究の類型が形式的な3類型に留まり、改訂できなかった。
理由2)北欧、西欧、一部のアメリカは、理論優位な授業研究であり、多くのアジア、日本は実践優位な授業研究であると言われている。日本の授業研究は、1970年代の多様な授業研究の潮流が衰退し、授業研究を含んだカリキュラム・マネジメントを基盤に多くの学校が新しい文脈で授業研究を展開している。それぞれの学校の授業研究を特質を解明するまでのデータ蓄積ができなった。
理由3)民間教育団体の授業研究の場合は、解釈共同体としての展開過程が長期であるために、その持続(評価ー反省ー設計ー実践)の特質を把握しやすい。いっぽう、各学校の場合には校長の交代や研究指定などの理由により、短期的である。各学校を対象とする授業研究を通した解釈共同体の存続・革新・変革を解明するためには、研究の再デザインが必要である。

今後の研究の推進方策

推進方策1)2023年度には、インドネシア、中国、シンガポールなどアジアを中心に、授業研究の母体、授業研究のサイクル、授業研究の目的などに関するインタビュー調査を実施する。また、アメリカにおける実際の授業研究の成果とWeb公開資料をもとに、授業研究のサイクル、目的などの調査を行う。そのことを通して、実際の授業研究の類型を再設計する。
推進方策2)1970年代より継続している民間教育団体を複数選択する。また、授業研究を伝統的に推進している学校とカリキュラム・マネジメントの文脈で推進している学校を、5地区ごとに複数選択する。そして、各学校の授業研究の特質を解明し、授業研究の類型化をする。
推進方策3)推進方策2と連動して、比較的継続して授業研究を展開している学校を複数選択し、学校の研究体制や学校文化、そして授業研究の類型の相互関係を解明する。
2023年度には、複数の中間報告として、これまでの研究成果を公表する計画を立案する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] ドイツ政治教育における子どもの発言の解釈に関する予備研究2023

    • 著者名/発表者名
      的場正美
    • 雑誌名

      東海学園大学研究紀要 人文科学研究編

      巻: 28 ページ: 45-58

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 教育実践におけるデータと「子どもをとらえること」についての基礎的考察2023

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 雑誌名

      九州大学大学院教育学研究紀要

      巻: 25 ページ: 71-82

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] From “content” to “competence”: A cross-cultural analysis of pedagogical praxis in a Chinese science lesson2023

    • 著者名/発表者名
      Arani, M.R.S., Gao, Y., Wang, L., Yoshiaki Shibata, Yanling Lin, Hiroyuki Kuno & Toshiya Chichibu
    • 雑誌名

      Prospects(Springer)

      巻: Online ページ: -

    • DOI

      10.1007/s11125-022-09630-9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 人間の道具化と手段化に抗する教育方法学5 教育課程・カリキュラム論(後)-実施されたカリキュラムに焦点を当てて -2023

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 雑誌名

      考える子ども

      巻: 418 ページ: 40-43

  • [雑誌論文] 理科サークルにおけるオンライン掲示板を利用した研究活動と科学的説明の構築2022

    • 著者名/発表者名
      大野栄三
    • 雑誌名

      北海道大学大学院教育学研究院紀要

      巻: 140 ページ: 353-376

    • DOI

      10.14943/b.edu.140.353

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 地域と学校の協働の動向と実践的課題 : 学校運営協議会の設置による協働に注目して2022

    • 著者名/発表者名
      吉田 成章 滝沢 潤 松田 弥花 安藤 和久 川本 吉太郎 藤原 由佳 阿蘇 真早子 武島 千明 澤田 百花 俵 龍太朗 藤井 冴佳
    • 雑誌名

      広島大学大学院人間社会科学研究科紀要. 教育学研究

      巻: 3 ページ: 173-182

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] わたくしの初志理解2022

    • 著者名/発表者名
      的場正美
    • 雑誌名

      考える子ども

      巻: 417 ページ: 2-5

  • [雑誌論文] 人間の道具化と手段化に抗する教育方法学1 何ものも絶対とすることのない教育を索めて2022

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 雑誌名

      考える子ども

      巻: 413 ページ: 47-50

  • [雑誌論文] 人間の道具化と手段化に抗する教育方法学2 教育への二つの問い(「どう教育するか」と「それは教育か」)2022

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 雑誌名

      考える子ども

      巻: 414 ページ: 51-54

  • [雑誌論文] 人間の道具化と手段化に抗する教育方法学3 「学び」というもの/「学ぶ」ということ2022

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 雑誌名

      考える子ども

      巻: 415 ページ: 51-54

  • [雑誌論文] 人間の道具化と手段化に抗する教育方法学4 教育課程・カリキュラム論(前)-学習指導要領をめぐって-」2022

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 雑誌名

      考える子ども

      巻: 416 ページ: 51-54

  • [学会発表] ドイツ政治教育の授業における分節構造と生徒発言の解釈に関する研究― NRWギムナジウムにおける2003年の人権の授業事例を中心に ―2022

    • 著者名/発表者名
      的場正美
    • 学会等名
      日本教育方法学会第57回大会
  • [学会発表] Construction of scientific explanations using online bulletin board in a science teachers’ club2022

    • 著者名/発表者名
      Ohno Eizo
    • 学会等名
      The 15th Asia Pacific Physics Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] データを手がかりとした子どもへの人間理解と評価に関する研究―問題設定と研究枠組みの検討―2022

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 学会等名
      日本教育学会第81回大会
  • [学会発表] データを手がかりとする子どもへの人間理解と評価― 何を頼りに子どもを理解しようとしているか ―2022

    • 著者名/発表者名
      田上哲
    • 学会等名
      日本教師教育学会第32回大会
  • [学会発表] 授業研究における授業逐語記録の叙述形式に関する開発研究―社会科の事例を中心にー2022

    • 著者名/発表者名
      的場正美
    • 学会等名
      全国社会科教育学会第71回大会 Web

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公開日: 2023-12-25  

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