研究課題/領域番号 |
19H01638
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 高康 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (30291321)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育社会学 / 教育改革 / 公立中学校 / 進路選択 / 内申書 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2021年度に全面実施を迎える新学習指導要領の導入期に照準し、その変化のなかで中学生が高校受験に向かってどのように進路を選び取っていくのかを、量・質双方の方法を用いて実証的に描き出すことを通じて、教育社会学的に新しい知見を生み出していくと同時に、新学習指導要領をはじめとする現在進行中の教育改革に対して批判的かつ建設的な政策的インプリケーションの提出を目指すことにある。新型コロナウイルス感染拡大等の事情により、当初の予定通りの質的調査研究は実施できていない。しかしながら、その代替措置として一昨年度に実施した「入試制度と学校生活についての調査」は当初予定していたパネル調査ではなく、一時点の調査対象者から収集したデータではあるが、全国調査であるという大きなメリットがある。約3000名のサンプルからなるこのデータによって、高校入試における調査書選抜に関する過去の全国的な状況を俯瞰することが可能となった。2020年度においては、このデータの整理と分析について研究を進めることができた。基礎分析は終了しており、その成果は東京大学大学院教育学研究科紀要掲載の論文において提示した。同時に、高校入試との比較対象を意図しながら収集した大学入試関連の項目についても集計し、様々なメディアや会議等で報告をおこない、成果の一部を社会的に還元することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要において示した通り、研究方針を修正して量的全国調査を行ったことにより、研究課題に関する一定の前進をすることができ、またその調査を用いての研究成果をあげる目途をたてることもできた。しかし一方で、当初から求めていた質的な調査に関しては、コロナ禍の影響によりまったく進展していない。本研究の意図は、リアルな中学生の現実を、高校入試制度とりわけ調査書選抜とのかかわりで描き出すことにある。そのためには、質的調査は必要であり、研究最終年度に向けてその点の補強が求められることになる。そうした事情から、現時点においては、「やや遅れている」と申告せざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度もこのデータの分析を継続していくことが第一の課題となる。そのうえで、十分なフィールド調査ができない環境下においても可能な調査を行うべく今年度はさらに計画を修正し、以上のデータ分析を踏まえたうえで、二つの研究課題を設定した。 1)公立中学校(または高校)生徒および教員・塾関係者へのインタビュー調査の実施 経時的追跡が困難な状況においては次善の策として、回顧的にでもこれまでの状況をフォローする調査が必要である。調査対象となる中学校に依頼し、質的データを収集する。 2)地域を限定した回顧的疑似パネル調査の実施 1)のインタビュー調査を踏まえたうえで、都道府県を絞った(1つないし2つ)回顧的疑似パネル調査を行う。これにより、実際にパネルデータではなくとも、変化の様相をとられるセカンドベストの調査を実施し、可能な限り当初計画に近い研究目的を達成したい。 そのほか、以上の調査を補うための文献調査・補足調査も実施していく予定である。
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