本研究の目的は、2021年度に全面実施を迎える新学習指導要領の導入期に照準し、その変化のなかで中学生が高校受験に向かってどのように進路を選び取っていくのかを、量・質双方の方法を用いて実証的に描き出すことを通じて、教育社会学的に新しい知見を生み出していくと同時に、新学習指導要領をはじめとする現在進行中の教育改革に対して批判的かつ建設的な政策的インプリケーションの提出を目指すことにある。 一昨年度は調査を予定していた学校での調査実施ができなかったことから、急遽予定を変更し、全国の高校生を対象として、調査書を用いた入学者選抜方法についての意識と行動に関する振り返り調査を行った。約3000名のサンプルからなるこのデータによって、高校入試における調査書選抜に関する過去の全国的な状況を俯瞰することが可能となった。昨年度はこのデータの分析を継続しつつ、関係者インタビューと中学生を対象とする疑似パネル調査を実施する計画とした。しかしながら、研究を進める中で最終的な決定進路(入学した高校)の情報も不可欠との判断に至り、後者の質問紙調査については高校1年生に回顧的に尋ねる形式の設定に変更した。 今年度の実績としては、中学校関係者へのインタビュー調査を実施するとともに、2つの都県の1500名の高校1年生を対象とした無作為抽出調査を実施した。有効回収率は51.6%で郵送調査としては非常に高く、良質のデータセットを整えることができた。なお、2022年度は他の外部資金も得ることができたため、これを加えて調査規模を拡充することが可能となった。前年度まで得たデータを再分析するとともに、今年度の調査データを分析し、特に東京都と地方X県の比較を中心に、研究成果を報告書の形でまとめることができた(HP上で公開予定)。また、これらの分析結果をもとに、さらなる論文投稿および著書出版を計画している。
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