本研究では本来は2015年のネパール地震被災地のサンプル校において参加型評価のためのワークショップを通して検証を行う予定であったが、新型コロナ感染症及びデング熱感染拡大によりこうした活動は不可能となった。 このため代替案として、新型コロナ感染拡大による学校閉鎖の時期に学校運営が地域住民からの支援を受けてどのように対応し、子どもたちへの教育提供が確保されたかを確認し、そこに日本による技術協力によるアウトカムがどのように貢献しているかを検討し、日本の教育協力の特徴と課題を考察した。 2022年度には、ダディン郡とゴルカ郡において学校長200名への質問票調査を行い、その結果を踏まえて成功事例と考えられる6校において、2022年10月に参加型評価ワークショップを行った。その後、6校の学校長に対してサクセスケースメソッドを用いた詳細インタビューを行った。 ネパールの山岳地域ではWiFiへのアクセスが困難で、パソコン等もないためオンライン授業が難しい中、教員が家庭訪問をして宿題を出して個別指導をする、小規模グループで対面授業をする、携帯電話等を使ってのオンライン指導をするなどの授業方法が試行錯誤しながら提供された。保護者や地域住民の協力を得て行う小規模グループによる授業が、子どもたちにとって精神的支えにもなり、子どもたちの学習意欲をあげるのに役立ったことが分かった。また、日本の技術協力で行われる専門家が現地に入って技術移転を行うという現場主義(ハンズオン)のアプローチが成果を上げて、学校運営に生かされていることが理解された。本研究結果に基づいて英語論文「How did school-based management work to get through the COVID-19 pandemic in Nepal?」を取り纏め、現在国際ジャーナルに投稿中である。
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