研究課題/領域番号 |
19H01646
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
相澤 真一 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (00456196)
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研究分担者 |
岡本 智周 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60318863)
片山 悠樹 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40509882)
今井 順 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (30545653)
Rappleye Jeremy 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (00742321)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学校教育 / カリキュラム / 労働市場 / 戦後日本 / 西ドイツ / 東ドイツ / ソビエト教育学 / 学歴 |
研究実績の概要 |
本研究は、当初より、Ⅰ.日本パートとⅡ.国際比較パートに分けて研究を進めてきたが、次のような成果があった。まず、Ⅰの日本パートについては、第一に、師範学校の歴史を持つ教育社会学研究室の資料のディジタル復元を行い、ここから、戦後日本社会における新しい教育が地域に入っていく過程における抵抗や困難が再発見された。第二に、学校と労働市場へのトランジッションをめぐる資料分析を行った結果、価値あるいは身元保証機能としての学歴が浮上してくる過程およびそこで能力測定における試行錯誤があったことを確認した。国際比較パートでは、当初の計画より、よりドイツに重点を置いた分析を行い、特に東西ドイツ両方を比較に組み込み、特に東ドイツの学校と社会の編成過程を見ていくことによって、当時の社会主義的学校編成のあり方を確認し、さらに、そこからⅠとⅡの接合地点としてのソビエト教育学の知識伝達のありかたが注目されることを研究メンバー全体で共有した。東西ドイツを比較することならびに苅谷剛彦氏の『追いついた近代、消えた近代』の書籍を集中的に検討を行いながら、収集資料を分析することにより、日本とドイツが近代化がむしろ長い過程のなかで成熟したり、表層的に受容したりしながら進む過程を見ることができ、その点で、「長すぎる近代化」と表現した調書の妥当性は随所で確認された。さらに、そこから、ソビエト教育学にゆかりのある研究者の方々にインタビュー調査を行い、さらに今後調査を行う縁を得た。8月には、研究代表者がイギリスとドイツにて、研究面での情報交流と資料収集を進め、これらの方向性を見出すきっかけを得た。年間で、海外研究協力者も交えた計4回の研究会を行い、方向性の共有を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本およびドイツの資料調査については、一定水準以上の成果を見た。特に、師範大学の歴史を持つ教育社会学資料の分析や、戦後の労働市場におけるトランジッション過程の資料分析については、比較歴史社会学の知見として、かなり興味深い点まで到達することができた。また、東ドイツについて、かなり踏み込んだ資料を収集することができ、そこから日本との比較の軸をかなり深められたことも予想以上の成果があった。 一方で、戦前社会との連続性を見るべく統計資料を収集したものの、社会経済史的観点からまとめる困難に直面したこと、イギリスについては踏み込んだ成果のあった東西ドイツに比してまだ十分に深め切れていない点があることがある点で、総じていえば、想定通りの順調さではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1年度目で一つの有力な方向性として、確認したソビエト教育学および対抗軸としてのアメリカ教育学の知識伝達の問題を、プロジェクト全体で共有し、この点を比較歴史社会学あるいは比較教育学として解明していくことを目指していく。ソビエト教育学関係者については、学者のみならず、教育実践家についてもさらに聞き取り調査を行っていく必要性を共有できたため、必要に応じて聞き取り調査を研究プロジェクトのなかに組み込んでいく。また、学校から職業へのトランジッションの過程で、どのように能力や適性、さらに出自を評価するのか、という点についての比較歴史社会学あるいは比較教育学としての課題を得られたため、この点について、各国資料の収集を進めるのが2年度目の重要な作業となる。 今のところ、随時、聞き取り調査やドイツやイギリスでの調査を織り込むことを念頭に置いているものの、COVID-19の影響により、対面でのインタビュー調査や現地資料調査を盛り込むことが難しくなる可能性も考えられる。その際に、どうやって進めるかについては、既に1年度目末の研究会でも検討したものの、今年度はかなり危機感を持ってそれぞれの作業の遂行可否を見極めていく予定である。
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