研究課題/領域番号 |
19H01650
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研究機関 | 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 |
研究代表者 |
酒井 佐枝子 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, こころのケアセンター, 研究主幹 (20456924)
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研究分担者 |
野坂 祐子 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (20379324)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トラウマインフォームド・ケア / 支援組織 |
研究実績の概要 |
本研究では、子どもの支援に携わる組織を対象に、トラウマインフォームドケア(TIC:Trauma Informed Care)の導入の必要性と有効性に関する調査研究を行い、TICの知識とスキルの習得を目的とした教材開発と、TICに基づく支援システムの開発を目指す。 一年目の本年度は、TICの先駆的モデルであるSanctuary ModelをはじめとするTIC概念を本邦に導入する際の課題を抽出することを目的とした3つの調査研究を行った。1)まず、児童福祉領域において心理的及び医療的支援に携わっている実務家とのワーキングチームを立ち上げ、日本の現状に即したTICの導入を検討するためにTICに関する基礎資料を収集して文献研究を進めた。そのなかでサンクチュアリー・モデルの鍵概念であるS.E.L.F(Security, Emotion, Loss, Future)ワークブックの邦訳と日本の現場での導入可能性について検討した。2)本邦の支援者への自由記載アンケート調査のうち、所属する職場・組織における支援を行う上で困っていることに関する記載内容をKJ法により分析した。その結果、本邦におけるトラウマ臨床に意欲的に取り組む地域や医療機関における支援者においても、多忙や精神的疲弊によるコミュニケーションの減少、トラウマへの理解のばらつきがみられ、TICを導入することの困難さが明らかとなった。調査結果は、日本子ども虐待防止学会にて報告した。3)TIC臨床研究の第一人者である本研究協力者のSandra Bloom氏(Drexel University)との議論を通して、TICに関する資料および解説動画開発を行い、成果物は上記学会における国際シンポジウムにて公開した。主な内容として、トラウマが個人だけでなく組織全体にも影響を及ぼすメカニズムに関する解説、支援現場における「再トラウマ」を理解することの必要性、TICに求められる組織のありよう、本邦におけるTIC導入における諸問題が挙げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トラウマが支援組織に及ぼす影響に関する実態調査及びプログラム開発の一部に関してはおおむね順調に進んでいる。実態調査により、欧米のプログラムを日本に導入するうえでの課題が抽出され、実態や文化に即した修正が必要であることが判明したため、支援組織を対象としたTIC研修プログラム実施に関しては、開始時期を再調整し、次年度以降に着手することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、2017年より研究交流を継続しているTIC臨床研究の第一人者であるSandra Bloom氏を研究協力者に招き、研修プログラム/教材開発への研究協力が得られる体制を整えている。一方で、物理的交流の困難が継続する可能性を鑑み、支援組織を対象としたTIC研修プログラム開発とその効果の検証においては、動画作成等工夫が求められることとなることから、プログラム開発に当初予定していた以上に時間を要することとなった。したがって支援組織を対象としたTIC研修プログラム実施及び効果検証に関する研究は、プログラム開発でき次第、着手することとする。
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