研究課題/領域番号 |
19H01664
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小澤 基弘 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40241913)
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研究分担者 |
綿貫 啓一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30212327)
清水 由紀 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30377006)
野村 亮太 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (70546415)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 児童の表現 / 教員支援 / 多面的理解 / 研修 |
研究実績の概要 |
まず一つ目は、1人の美術専門家にあらかじめ設定した項目に従って児童画を評価してもらいそれを用い機械学習のための教師データの作成を行い、教師データを使用して機械学習モデルを作成した。そのモデル検証のため学習に用いていない児童画を用いた予測値と専門家が評価した値を比較し平均絶対誤差を算出した結果,5段階の評価値において平均絶対誤差は0.606となり、専門家の評価をある程度学習できてはいるが更なる精度の向上手法について調査を今後進めていく。二つ目は、モニターに提示された小学生の児童画の鑑賞絵を絵の専門家,小学校教員,児童絵に行ってもらい,その間の反応を視線計測によって記録した。そのデータを解析し視線が収束する箇所のフラクタル次元数に差異があるかを評価した。その結果学生と絵の専門家の間には絵の見方に違いがあり、小学生は最初に複雑な高フラクタル次元の絵内の事物に先に視線をあて,専門家は美しいとされている中位のフラクタル次元の絵内の事物に最初に視線を集める事がわかった。三つ目の実験として、モニターに提示された児童画の鑑賞と評価を参加者に行ってもらい、その間の反応を、アイトラッカーによって記録した。図工の作品としての評価、美術作品としての評価、好き嫌いの評価の3種類の教示の違いによって、絵画の視覚的特徴に基づくボトムアップな処理と評価の目的に基づくトップダウン処理がどう相互作用するのか調査した。また各参加者に印象評価に関するインタビューも実施した。調査の対象は一般大学生である。教示の違いから生じる差をもとに、実際の教育場面で教師が絵を見取ろうとした際にどう評価するかに関する検討を試みた結果、絵を見る際の視線の動きや各絵に対する評価の得点は教示によって異なることが示唆され、インタビューの結果から、教示の違いによって評価時に意識する内容や評価のしやすさに違いがある可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍であり、教員研修を実質的に行えない状態が続いている故に、研修による教員の教師力の変化に関わるデータを取ることが出来ないために、当初のRCRTに関する研究に着手できていない。オンラインでの研修の可能性も考慮したが、本研究における教員研修は主に制作体験を軸とする実技研修であり、オンラインでの実施では正確なデータを習得できない可能性があるからである。他方で、本研究の大きな柱であるAIによる児童画の機械学習については着々と実験及び分析を進めているが、機械学習の精度に関して改善する必要性が生じてきた。そのため専門家による児童画評価の枚数を更に増やし、その結果どのように精度が変化するのかを試行錯誤をする必要が出てきている。ただ、これらの試行錯誤は研究を進めていくうえで必然的な出来事であり、それに対処しつつ研究を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の複数の実験とその結果から、来年度(最終年)に行なうべき課題がかなり明らかとなってきている。来年度はおそらくコロナの影響はかなり改善されると推測されるので、来年度こそは実際に実技中心の教員研修を行ない、小学校教員を対象として児童画に対する一面的見方からどのようにすれば多面的な見方へと変革できるのか、その実技研修の内容を精査しつつ、時に改善を加えながら、研修以前以降の見方の変化を的確な実験を通して分析していく。
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