研究課題/領域番号 |
19H01667
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 恵 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (60163010)
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研究分担者 |
森 美智代 福山市立大学, 教育学部, 教授 (00369779)
松崎 正治 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (20219421)
田中 宏幸 安田女子大学, 文学部, 教授 (40278966)
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40390257)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 言語文化共同体 / 古典教材開発 / 学習方法開発 / カリキュラム開発 / 論理的思考力 |
研究実績の概要 |
本研究では、国語教育学・日本語学の研究者が連携を図りつつ研究を進展させ、3年間の研究期間中に、調査、仮説・検証、成果の共有と発信を行う。 国語教育領域では、思考様式(ものの見方・考え方)が関連する諸学問の先行研究の調査及び理論的解明、国語科の授業実践に前提される思考様式の抽出を担当している。これまでの研究成果を受け、①異化効果やアフォーダンス等の思考様式に関連する諸理論による理論的な解明、及びインベンション指導等の教育研究における思考様式の整理を進めた。ただ、研究協力校にて思考様式の実態調査として、②学習者への調査(質問紙法や作文分析)及び③教師への調査(授業の教育目標・内容を構想する教師へのナラティブ・アプローチ)を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、こちらは実施を中止した。また、言語文化共同体を行き来する学習者という観点から、文学理論や物語文法における知見や文学教育実践をもとに、歴史を追体験することによる学びの仮説を提案した。 日本語学・文学領域では、現代の学習者の思考様式のベースとなる日本語史上の書記体を発掘し、それがどのような思考様式として文章の生成に関わるか、分析・検討した。本年度は昨年度に引き続き、①平安時代の初めから明治期までに撰述された資料における書記の複層性の実態解明、及び②各資料(群)に認められる思考様式の解明を目指した。特に、和文・漢文訓読文・記録文の三つの文体範疇の独自性と関連性(混淆)において展開する日本語書記のあり方を中心に据え、同一文章ジャンル、同一の内容であるが異なる書記様式/文体で書かれた資料の比較を行い、各書記様式/文体に固有の思考様式とその相互交渉とを明らかにした。同時に、③現行教科書において定番化している教材『徒然草』『論語』等について、本研究の観点からの再定位を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、学習者の「読み・書く」言語活動における思考(ものの見方・考え方)の深化を可能にする古典の学習を提案する。そのために、言語文化共同体に生きる学習者という視点から、過去の言語文化共同体の内実を解明し、現代の言語文化共同体との間を行き来する学習者を実現するための学習材・学習方法・カリキュラムの開発と検証を目指している。それには、複数回の研究発表会と十分に時間をかけた協議により、メンバー全員の理解の深化と、理論面の構築を図る必要がある。 2019年度は、2019年8月31日・9月1日に新潟大学東京事務所にて、メンバー5名と研究協力者2名の計7名にて、対面方式による研究発表会・研究打合せを開催することができたのであるが、2020年3月14日・15日に予定されていた研究発表会・研究打合せは、折から感染拡大を始めた新型コロナウィルスの影響により、やむなく中止せざるを得なくなった。2020年度はこの反省に立ち、zoomによる非対面方式での研究発表会・打合せを実施することとし、これを2020年12月19日、2021年3月16日の2回開催することができた。 また、研究協力校における授業実践については、なかなか計画通りには実施できなかったものの、鈴木恵「『竹取物語』の新たな授業づくりの方法」(『新大国語』第42号・投稿中)に基づく古典教材『竹取物語』に関する研究授業を、2020年12月2日(新潟大学附属長岡中学校、伊藤裕教諭)、2021年3月18日(長岡市立南中学校、本井啓介教諭)の2回実施することができた。 昨年度から取り組んでいる全メンバーによる共同論考は現時点では完成に至らず、さらにブラッシュアップして全国大学国語教育学会『国語科教育』に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、学びのプロセスと日本語書記史を統合する学習材・学習方法・カリキュラムの開発と検証を目的としている。特に、日本語の歴史的変遷を背景とした「我が国の言語文化」の内実を解明し、それに基づいた学習方法の開発を目指す点に本研究の特色がある。 具体的には、これまでの2年間の成果を受けた形で、引き続いて日本語に特有の「ものの見方・考え方」に着目し、① 国語教育学で研究・実践してきた思考様式(ものの見方・考え方)の解明、及び日本語話者としての学習者のものの見方・考え方の解明、② 日本語学(特に日本語書記史)から見た日本語のものの見方・考え方の解明、③ 日本語固有のものの見方・考え方と言語文化共同体の解明、④「書くこと」の教育のための学習材・カリキュラム・学習方法の開発と検証、を中心とした研究を行う予定である。 2021年度は最終年度に当たるため、研究の最終まとめを行うことになる。当面、新型コロナウィルスの感染状況を注意しつつ活動せざるを得ない状況に変わりはないであろうが、極力機会を作って研究協力校における授業実践を行い、また一方で非対面方式による研究発表会・打合せを複数回開催して、我々が開発した学習材・カリキュラム・学習方法の有効性を検証する予定である。 また、2021年度末には、3年間の研究の成果をまとめた報告書(冊子体)を作成する予定である。
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