研究課題/領域番号 |
19H01669
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齊藤 忠彦 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (10313818)
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研究分担者 |
島田 英昭 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20467195)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多感覚相互作用 / 芸術教育 / 感性育成 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の影響で,音楽活動は,従前のように合唱ができない,合奏ができないという状況が続いている。その影響が長期化し,学校教育のスタイルも大きく変容する中で,ニューノーマル時代に向けての学校教育の変革が求められている。そのため、本研究における感性育成プログラムのモデルについても修正せざるを得ない状況となった。 2020年度,2021年度は,コロナ禍における音楽活動の制限について検討するために,歌唱時や楽器演奏時の飛沫可視化実験を行い,科学的なデータをもとにした検証を行った。2021年度は,歌唱法の違いによる比較検討を行い,ハミングで歌うことや,弱く歌うことが飛沫量を減らすことができるようになることを明らかにした。器楽の活動については,同実験を通して,鍵盤ハーモニカ等の演奏時には顕著な飛沫拡散は見られないことを明らかにしたものの,新型コロナウイルス感染症はマイクロ飛沫による感染の可能性があることが指摘されるようになった。そこで本研究では,電子キーボードを用いての合奏の授業を小学校第1学年で行った。その結果,電子キーボードを用いた合奏に児童が興味を示し、意欲的に練習に取り組む児童の姿を確認することができた。また,授業後に行ったアンケートに中に「しずかなおとでよかった」「きれいなおとでよかった」と記した児童が複数名いた。従前の音楽の活動では,歌唱の授業で小さな声を出すことや,器楽の授業で小さな音を出すことについては,あまり奨励されることではなかったが,コロナ禍において,そしてニューノーマル時代の時代に向けて,「小さな音」は,新しい時代の子どもたちにとっての感性の育成の新しいキーワードの一つとなる可能性があることを明らかにした。ニューノーマル時代における子どもたちの感性育成は,これまでには目を向けていなかった視点が含まれてくる可能性があることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度(令和3年度)は,新型コロナウイルス感染症の影響で研究の方向の修正が求められた。前述のように,従前の芸術教育の概念に基づくモデルの構築及びその検証はできなかったが,その代わりに,ニューノーマル時代に向けての感性育成に関わるキーワードについて授業実践を通して検討することができたことや,芸術教育の在り方そのものに関わる本質的な検討が進んでいることから,研究はおおむね順調に進んでいると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,学校の芸術教育のニューノーマルとは何か,そして,ニューノーマルの時代における多感覚作相互作用に注目した感性の育成の在り方について検討を行う。 学校教育では、2019年にスタートしたGIGAスクール構想により、一人一台のタブレット端末の利用が加速している。例えば、音楽の授業における鑑賞は、従前のように音楽室に設置されている大型のスピーカーからの再生によるものだけではなく、タブレット端末によるイヤホン等を用いての鑑賞が取り入られるようになる。美術の授業における作品の鑑賞は、従前のように美術室に設置されている大型のモニターを用いての提示によるものだけではなく、タブレット端末による画面を用いての鑑賞が取り入られるようになる。個別に鑑賞することにより、音楽であれば聴きたい箇所を何度も繰り返し再生したり、美術作品であれば、見たい部分をクローズアップして鑑賞したりすることができるようになる。このように、個に応じた学びが実現可能となり、このことは個に応じた感性の育成にもつながると考えることができる。 中央教育審議会は、2021年4月に「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと協働的な学びの実現~(答申)」を発表し、「個別最適な学び」がキーワードの一つとなった。従前の芸術教育においては、例えば、みんなで歌う、みんなで合奏する、みんなで作る、みんなで鑑賞するという活動内容が多く、感性についても、全体の中での個という視点での感性の育成に偏りがちであった。しかし、ニューノーマル時代に向けて、本研究では、個別最適な感性の育成に関わる視点を含めて検討を行うこととする。具体的には、ICTを活用し、タブレット端末を用いての感性の育成モデルを含めて検討する予定である。
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